研究課題
特定領域研究
本研究では、蛋白質内部空間を錯体合成・反応のための特異な反応場と位置づけ、全く新規な金属錯体の合成法確立と反応への応用を目指すとともに、蛋白質空間内に取り込んだ金属錯体を用いて、外部シグナルによる内部空間自体の可逆的な制御とシグナル変換を目的としている。本年度は、昨年度に引き続き、活性酸素のセンサーとして機能するシグナル伝達タンパク質のセンサー構造とセンシング機構(研究1)ならびにアポミオグロビンへ金属錯体を取り込ませた人工金属酵素開発の研究を行なった(研究2)。研究1では、活性酸素を感知する転写調節因子VnfAが3鉄-4イオウ型の鉄イオウクラスタ([3Fe-4S])を有することを明らかにした。[3Fe-4S]のような不完全キュバン型クラスタが、センサーとして機能するタンパク質はこれが最初の例である。またVnfAタンパク質の末端に位置する3つのシステイン残基(Cys^8,Cys^<10>,Cys^<15>)がクラスタをタンパク質へ固定する配位子として機能することをつきとめた。このうち、Cys^<15>をアラニンに置換したC15A変異体は、他のCys^<10>,Cys^<15>の変異体とは異なりDNAに対する結合能をも喪失していた。このことより、VnfAのセンシング機構は、センサーである[3Fe-4S]で生じる構造変化をクラスタの配位子であるCys^<15>を介してVnfAのDNA結合部位へと伝達し、DNA結合能の変化を誘起するものと考えられる。今後、[3Fe-4S]の構造変化とタンパク質の構造変化の関係をより詳細に検討する予定である。研究2では、ヘムを取除いたアポ型ミオグロビンに対し、Bis(oxazolinyl)phenyl配位子(Phebox)を有するロジウム錯体の挿入を行い、ミオグロビン-金属錯体の複合体形成に成功した。得られた複合体の安定性は天然のミオグロビンに匹敵する。今後触媒活性の開発を行なう予定である。
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J.Am.Chem.Soc. 127
ページ: 12190-12191
Journal of Biological Chemistry 280
ページ: 3269-3274
ChemBioChem (in press)