研究概要 |
ピロールの数およびピロール同士を連結するスペーサーを変化させることにより、環のサイズとフレキシビリティーの異なるポルフィリノイドを合成することが可能である。これらの大環状化合物は複数の金属に配位することが出来るが、複数の金属の相対的な位置を規定することが可能であると同時に、金属の配位によって環状構造も制御される。 イソコロールはピロール4つからなる環状化合物であるが、その高次シクロオリゴマーであるシクロオクタピロール、シクロドデカピロールのRh錯体を合成し、その構造を明らかにした。シクロオクタピロールの金属錯体では8の字ループの右捩れと左捩れの構造が固定されており、光学活性カラムにより、光学分割することができた。分離した鏡像体のCDスペクトルは正負逆であることを確かめた。分子サイズの大きなポルフィリノイドの多核金属錯体を合成し、その構造と性質を明らかにするために、1,4-フェニレン基、および4,4'-ビフェニレン基をスペーサーとするビピロールを用いてポルフィリノイドを合成した。ベンズアルデヒドとの縮合反応により6個のピロールからなるロザリンを61%,52%の収率で得た。8個のピロールからなるオクタフィリンはビピロールとビスアザフルベンとの[2+2]型の反応により18%,5%の収率で得た。これらのポルフィリノイドと[Rh(CO)_2Cl]_2との塩基存在下での反応により、ジピリルメテン部の2つの窒素と2つのCOから成るRh(I)平面4配位構造を有する3核および4核錯体を80%以上の収率で得た。更に、Pd(acac)_2との反応によって、3核錯体を69%,77%の収率で得た。これらのポルフィリノイド多核錯体の動的構造は溶媒の極性、スペーサーのサイズ、金属および補助配位子の種類、環を構成するピロールの数などの要因によって制御できることが明らかになった。
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