研究概要 |
Ti系歯科材料のろう材としての金属ガラスの可能性を目指し,市販の赤外線ろう接装置に対して,真空度ならびにろう接後の冷却速度を改善することにより,従来からの問題点の解消を試みた。組織観察、耐食性ならびに機械的性質により、接合部を評価した。主な結果は次の通りである。 (1)市販の赤外線ろう接装置ではPd_<40>Cu_<30>P_<20>Ni_<10>金属ガラスのみがろう接できたが,今回の装置改善により,さらにZr_<55>Cu_<30>Al_<10>Ni_5ならびにTi_<50>Cu_<20>Ni_<20>Nb_<10>金属ガラスによるろう接が可能となった。 (2)いずれもアモルファス単相を得ることはできなかったが,Pd_<40>Cu_<30>P_<20>Ni_<10>合金では均質な断面組織が得られた。 (3)Ti_<50>Cu_<20>Ni_<20>Nb_<10>金属ガラス接合では約1.5GPaの曲げ強さが得られた。Pd_<40>Cu_<30>P_<20>Ni_<10>金属ガラス接合では1.5倍の引張強さと1.6倍の曲げ強さが得られた。この結果はろう接後の冷却速度の向上による界面反応の抑制と雰囲気制御による酸化抑止効果が有効に働いたものと考えられる。 (4)Cu_<60>Hf_<25>Ti_<15>ろう接材は破断強さが極端に小さく,耐食性も悪かった。また,Mg_<65>Cu_<25>Gd_<10>ろう接材は接合ができなかった。 (5)本実験で使用した合金系では,Pd_<40>Cu_<30>P_<20>Ni_1ならびにTi_<50>Cu_<20>Ni_<20>Nb_<10>ろう接材が耐食性ならびに機械的強さにおいて優れており,Ti用ろう材としての応用が期待できる。 (6)Pd_<40>Cu_<30>P_<20>Ni_<10>ろう接部ではろう材に基づく結晶相の他にNi_3Ti基本構造のDO_<23>相が検出された。 (7)Pd_<40>Cu_<30>P_<20>Ni_<10>ろう接部でフラックスに起因するNaとKが検出され,これが脆性破壊の原因の一つと考えられる。 (8)接合材の溶接内部は,ガラス相にTiを含むサブミクロンサイズの初晶および包晶が分散する組織であった。
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