研究概要 |
昨年度に続き本年度も、(a)プラズマディスプレイパネル(PDP)マイクロ放電、(b)大気中レーザー生成プラズマ、(c)極端紫外(EUV)光源用放電プラズマを測定対象として研究を進めた。 (a)については非協同的散乱領域(トムソン散乱パラメータα<<1の領域)にある電子密度n_e・電子温度T_eのマイクロ放電プラズマに対して、空間分解能50μmを達成した上で、PDPマイクロ放電に普遍的に現れる定在縞の構造を詳細に測定することに成功した。特に,赤外の計測システムの開発により、Ne/Xe混合ガス中の放電でもそのような定在縞構造の計測を可能とした。 (b)と(c)は、協同的散乱領域(α>1)にある。(b)の大気中レーザー生成プラズマは研究室内で容易に生成できるので、これを対象として今年度はイオン項計測システムの開発を行った。波長分解の16pmで中心波長より40pm離れた波長位置での迷光リジェクションが10^<-5>の3回折格子分光器を、特に狭いイオン項スペクトル分光計測のために製作した。これを用いて、実際に大気中レーザー生成プラズマからのイオン項の測定を実証し、温度,密度およびイオンの荷電数Zを決定できることを示した。 (c)の実験は、熊本大学秋山教授の研究室との共同研究として行った。九大より計測システムを熊本大学に持ち込んで測定を行った。昨年度までの実験の結果、電子項の検出には成功したが、EUV光放射時刻(ピンチ後50ns程度以内の時刻)では、プラズマ背景光が強すぎてトムソン散乱信号が検出できないことが明らかとなった。そのため、九大で新たに開発したイオン項計測システムを適用して、ピンチからピンチ直後のタイミングでイオン項スペクトルを検出することを試みた。その結果、Xeガスを動作ガスとするときはまだ計測系の波長分解が不足したが、Arガスを動作ガスとした場合には,詳細なイオン項スペクトルを検出することに成功した。これにより、EUVプラズマの電子密度、電子温度、およびイオンの荷電数を同時に測定する見通しが得られた。
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