研究課題
特定領域研究
本年度では、ネムリユスリカやモデル系に対する実験及び理論計算を通して、次の成果を得た。1.ネムリユスリカ幼虫の乾燥耐性:トレハロースの「ガラス化」がネムリユスリカの乾燥耐性発現に必須であることを実証するため、体内にトレハロースを蓄積しているがガラス化していない、ネムリユスリカ試料を調製し、再水和後の蘇生率を調べた。その結果、幼虫体内に十分な量のトレハロースが蓄積されていても、相対湿度の高い(93%、98%)条件化で吸湿し、ガラス状態が失われると、ほとんど蘇生できなくなることが判明し、上の仮説が実証された。2.トレハロースと蛋白質の相互作用:水晶発振子マイクロバランス法(QCM)とCDスペクトル測定により、βアミロイド(Aβ)の凝集過程へ与えるトレハロースの影響について調べた。QCM実験では、Aβの二次構造で区別される3つのホスト-ゲスト系について測定を行った。その結果、ホスト、ゲストのうち少なくとも一方がランダムコイル状態のとき、トレハロースは特異的な凝集抑制もしくは促進作用があることが判明した。また、CDスペクトル測定により、トレハロース添加系ではランダムコイルからβシート状態への二次構造転移速度が低下することが判明した。以上より、トレハロースはランダムコイルに作用し、βシート構造への転移を抑制することにより、凝集過程に影響を与えると推定された。3.トレハロースと疎水基の相互作用:蛍光、NMR測定及び計算機シミュレーションにより、トレハロースと芳香族化合物との相互作用を調べた。その結果、トレハロースは1位、2位および6位のOH基を介しベンゼンと1:1で錯体形成することが判明した。そのとき、トレハロースのは2位および6'位水酸基とベンゼン水素がCH…OならびにOH…π様水素結合を形成していた。本研究結果より、2で述べた蛋白質の凝集抑制作用の実験結果は、次のように解釈される。一般に、ランダムコイル状態(蛋白質の変性状態)では、疎水性残基が水に露出するようになるため、疎水性相互作用を駆動力とした凝集が進みやすい。このような状況において、トレハロースが共存すると芳香族側鎖に結合するため、疎水基同士が互いに直接接触することが妨げられ、結果として凝集が抑制されると考えられる。
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