研究概要 |
水中におけるタンパク質フォールディングを理解するためには、天然構造のみならず、タンパク質の変性状態や中間状態について調べることが重要である。本研究では、超好熱菌Pyrococcus furiosusl由来Pyrrolidone carboxy peptidase (PCP)のCysフリー変異体(Cys142/188SerPCP, PCP-0SH)についてフォールディング開始直後に形成される中間体構造について研究した。本年度は以下の研究成果を得た。 1.PCP-0SHの中間体構造のプロリンスキャニング AヘリックスからFヘリックスまで、天然構造でヘリックス内に位置するアミノ酸残基をプロリンに変異させたPro変異体を15種類作製し、Pro変異による中間体の二次構造含量の変化をCDスペクトルで測定した。その結果、A,B,C,D,Fヘリックスの位置で二次構造が存在していること、さらに、EヘリックスのC末端側では二次構造が形成されていないこともわかった。また、ルーズにパッキングした疎水性コアの形成と二次構造の関係について研究した。中間体構造における疎水性コアの形成には、DヘリックスとFヘリックスの形成が特に重要であることがわかった。 2.PCP-0SH中間体構造のNMR解析 17種類のアミノ酸選択的ラベルと^2H/^<13>C/^<15>Nラベル体の3次元NMRスペクトルを組み合わせることで、中間体のNMRシグナルの帰属に成功した。解析の結果、PCP-0SHの中間体構造において、C末端半分はミリ秒〜マイクロ秒の時間スケールで運動していることが示された。また、^1H-^<15>N異種核NOE測定から、中間体構造のN末端半分はピコ秒〜ナノ秒の時間スケールでの運動性が高く、特にN末端6残基とHis66-Ser74で激しく運動していることがわかった。これらの研究結果は、PCP-0SHの中間体構造はN末端半分とC末端半分で運動性が大きく異なることを示している。
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