研究課題
特定領域研究
計画の中で、マスターレギュレーターにより誘導された染色体構造の変化は、DNA複製をはじめとする細胞増殖サイクルに影響を与えるか、という問題について成果が得られた。哺乳動物などの高等多細胞生物では複製開始点について、共通配列が存在せず、エピジェネティカルな染色体構造が、その選択に重要であるという仮説が提示されている。ヘルパーT細胞サブセットの分化は、ピストン修飾やDNAメチル化などのエピジェネティカルな染色体構造変化をともなう。このようなエピジェネティカルな染色体構造と複製制御との関係を解析するため、まず複製開始点をIL-4/IL-13ローカスで探索した。その結果IL-13遺伝子下流に複製開始点oriIL-13を同定した。oriIL-13はTh1/Th2の両サブセットに存在し、H3ヒストンのアセチル化およびジメチル化の修飾による影響を受けないことが明らかとなった。さらにTh2特異的なサイトカインの発現に重要である、保存された遺伝子間領域CNS-1が、oriIL-13の選択に重要であること、またCNS-1の欠失が、ピストン修飾にも影響を与えないことから、ヒストン修飾を介さずに遺伝子発現量を制御すると考えられた。すなわち複製開始点の選択とTh2サイトカインIL-4およびIL-13の発現量の制御にCNS-1領域は重要であるが、共にヒストンの修飾(H3K9/K14のアセチル化とH3K4のジメチル化)を介さず、他のメカニズムを考える必要がある。この成果は現在投稿中である。In vitroで分化させたエフェクターT細胞をマウスに移入することで誘導されるメモリーTh2細胞において、IL-4産生能、またCNS-1欠失による発現量の減少は維持された。しかし、IFNγの産生活性も誘導される細胞群がかなり検出され、メモリー細胞誘導過程でIFNγ産生の抑制がかからなくなる可能性が示唆された。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (1件)
FEBS Lett. 570
ページ: 53-58