研究概要 |
オルガネラ間の物質輸送は小胞を介して行われる.目的の部位に到達した小胞は,標的膜と融合することによって積荷を受け渡す.繋留因子は,膜融合の初期段階で,小胞とその標的膜とを特異的に繋留することによって輸送の特異性を保証する.繋留因子は,3-8個のサブユニットから構成されるタンパク質複合体であり,低分子量GTPaseとの相互作用によってヌクレオチド依存的に制御されている.本研究では,開口放出で働くExocyst複合体の立体構造をX線結晶構造解析あるいは電子顕微鏡によって決定し,繋留の物理的機構とその制御機構を明らかにする.さらに,変異体をつかって細胞レベル,in vitroでの解析を行い,機能の面からの裏付けを行う.今年度は,ほ乳類のExocyst複合体の電子顕微鏡による解析と,酵母のExocyst複合体と結合するSec4のGEFであるSec2のX線結晶構造解析を行なった.Exocyst複合体は,ブタ脳あるいはラット脳から精製し,電子顕微鏡をつかって,酢酸ウラニルによる負染色像を観察した.当初は,粒子の均一性に問題があったが,調製方法を改善することにより,Exocyst複合体全体と考えられる約150Åの大きさの粒子を多く観察できるようになった.しかしながら,解離した複合体と考えられる約60Åと120Åの大きさの粒子が依然として残っており,解析の妨げとなっている.粒子の均一性を高めることにより,単粒子解析が可能な試料調製法を確立することが,今後の課題である.また,Exocyst複合体と相互作用するRalのGTPase活性化タンパク質を新規に同定した.in vitroでの活性測定を終え,現在は,細胞レベルでの解析を行なっている.一方,Sec2については,Sec4との相互作用領域の結晶構造を3.0Å分解能で決定した.Sec2のSec4結合領域は,200Åの長さをもつトロポミオシン様のcoiled coilを形成していた.現在,立体構造にもとついてin vitroでの機能解析を進めている.
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