研究概要 |
3T3-L1細胞を定法により分化誘導し、細胞内の脂肪蓄積が十分になるまで培養を続けた。2日間の培養(コンディション)培地を回収し,遠心分離を組み合わせて膜小胞画分を得た。マーカータンパク質MFG-E8の局在を免疫電子顕微鏡により詳細に観察したところ,直径100nmのいわゆるexosomeだけでなく,直径が1μmにもおよびmicrovesicleにも存在することが明らかとなった。つまり脂肪細胞から分泌される膜小胞は,一部のガン細胞で報告されているように由来の異なる混合体として存在することが明らかとなった。 脂肪が過度に蓄積した脂肪組織への浸潤が報告されているマクロファージに対する脂肪細胞由来の膜小胞の機能を考えて,脂肪細胞より集めた培養上清をそのまま,あるいは超遠心分離により膜小胞画分を除いた状態でマクロファージ(J774細胞)に与えて培養した。そのまま与えた場合,マクロファージの活性化(F4/80の発現),炎症性サイトカイン(IL-6)の発現・分泌は観察されなかったが,膜小胞を除いた培養上清で培養した場合,これらの顕著な発現誘導が見られた。つまり膜小胞にはマクロファージの活性化に対する負の制御因子が含まれることが予想される。現在脂肪細胞の培養上清に含まマクロファージの活性化を引き起こす正および負の制御因子の同定を進めている。また膜小胞にはマトリクスプロテアーゼが少なからず含まれることも併せて見出し,従来の小胞体・ゴルジ経由とは別に膜小胞経由での分泌メカニズムが存在することを証明した。以上の結果は論文にまとめ,現在投稿中である。
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