研究課題
特定領域研究
レグインスリンは、ダイズ由来分子量4kDaの生理活性ペプチドであり、その受容体タンパク質であるLBPに特異的に結合する。LBPは、分子量170kDaのタンパク質であり、レグインスリンの結合によって活性が促進する新奇な受容体様タイロシンキナーゼである。LBPは植物の原形質膜や細胞壁に局在するため、細胞内外の信号変換を行い、成長や分化に関する情報伝達に関与すると考えられている。すでにLBPの結晶化に成功しているが、結晶性の再現性が悪く、同型な結晶を恒常的に得ることが困難であった。今回精製条件を再検討することで、同型な結晶を再現性良く得ることに成功し、かつX線回折の分解能が飛躍的に向上した。LBPはダイズ種子から精製し、その過程において硫安分画を行う。今回、硫安分画の行程を省き、代わりにイオン交換カラムを用いたことで、収量および純度を上げることができた。得られた試料で結晶化を行ったところ、これまでと同様な条件で結晶を得ることができた。現在得られている結晶は、前回までの結晶よりもサイズは小さい。しかし、PF BL5においてX線回折実験を行ったところ、2.6Å分解能までの回折強度データを収集することに成功した。LBPはシステインを12個有するため、水銀誘導体結晶の調製が可能であると考えた。しかし、種々の水銀化合物を用いて水銀誘導体結晶の調製を試みたが、構造解析に有効な誘導体結晶を得ることができなかった。この結果から、LBPのシステインは全てジスルフィド結合に関与しているか、分子内部に存在しているのではないかと予想できる。今後は、網羅的に重原子誘導体結晶を調製し、構造解析を進めていく。また、LBPの結晶は回折方向に異方性があり、結晶の縦方向では、現在2.0Å分解能までの回折点を確認できる。したがって、結晶化条件を至適化することで、高分解能結晶構造解析可能になると考えている。
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