研究概要 |
1、MFS型輸送体の基質認識機構 MFS型トランスポータの基質認識機構を明らかにするため、酵母の高親和性糖輸送体Hxt2と低親和性糖輸送体Hxt1の網羅的キメラ解析を行なった。まず12個ある膜貫通領域をシャッフルすることにより膜貫通領域1,5,7,8がHxt2の高親和性グルコース輸送に必要であることを見出した。さらにその領域にあるHxt2とHxt1で異なる20個のアミノ酸残基についてどの残基が必要か調べた。飽和変異(Saturation mutagenesis)によりLeu-59,Leu-61,Leu-201,Asn-331,Phe-366が重要であることがわかった。さらにPhe-198,A1a-363とVal-316またはA1a-368のいずれかにより最大活性が発揮できることがわかった。これら8個のアミノ酸残基が基質認識に必要なミニマムな残基であることが判明した。分子モデリングによりAsn-331は基質と直接相互作用をし、他の残基は輸送体の構造維持に寄与していると推測された。 2、リンゴのソルビトール輸送体の同定と輸送活性の特徴 リンゴの主要な光合成産物であるソルビトールの輸送体を博士研究員の豊福らが同定した。MFS型の3種のパラログが見出され、それぞれを酵母で発現しその性質を調べた。ソルビトールのほかにキシリトールとミオイノシトールが基質で、mM程度の親和性であった。プロトノフォアで輸送が阻害されることからH^+と共役する能動輸送をおこなうと考えられる。 2、ヒトの糖輸送の先天性異常の解析 小腸や腎臓に存在するNa^+依存性の糖輸送体(SGLT1)の先天性異常であるグルコース・ガラクトース吸収不全症のトルコの初例でSGLT1にThr460Proの変異があることを明らかにした。両親の遺伝子解析の結果、Compound heterozygousな変異であることがわかった。輸送体に対する抗体を用い、アフリカツメガエルの発現系では細胞膜に発現していることが確かめられた。この変異により不活性な輸送体が合成され細胞膜まで運ばれると考えられる。Thr460Proは基質認識に重要と考えられている膜貫通領域11にあり輸送のメカニズムの研究にも重要な所見である。
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