研究課題/領域番号 |
16074208
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研究種目 |
特定領域研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
渡辺 芳人 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 教授 (10201245)
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研究分担者 |
中島 洋 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (00283151)
上野 隆史 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (70332179)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2007
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研究課題ステータス |
完了 (2007年度)
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配分額 *注記 |
59,000千円 (直接経費: 59,000千円)
2007年度: 10,500千円 (直接経費: 10,500千円)
2006年度: 31,000千円 (直接経費: 31,000千円)
2005年度: 10,500千円 (直接経費: 10,500千円)
2004年度: 7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
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キーワード | フェリチン / 鈴木カップリング / ミオグロビン / パラジウム / 有機金属 / 生体触媒 / 金属蛋白質 / 人工蛋白質 / 結晶構造 / 還元反応 / 金属クラスター / Pdクラスター / 有機金属酵素 / 合金 / コア・シェル構造 / ナノクラスター / ヘムオキシゲナーゼ / 電子伝達 / 酸化還元 / ヘム / 水素結合 |
研究概要 |
1. アポミオグロビンを用いた人工金属蛋白質の構造解析 ミオグロビン(Mb)のヘムキャビティーにヘムとは異なる構造の金属錯体を導入し、Mb内部での配位構造を検討するため、複合体のX線結晶構造解析を行った。4配位構造をとるCuII(Sal-X)(Sal-X=N-salicylideneaminoacidato)錯体と有機金属錯体であるRh・Phebox錯体はそれぞれHis64, His93に配位し、周辺のアミノ酸残基との水素結合や・-・、CH-・相互作用によってヘムと全く異なる配位構造、配向でMbキャビティーに固定化されることがわかった。これらの結果からMbキャビティーは周辺のアミノ酸残基との相互作用により様々な構造を持つ金属錯体を安定に取り込む事が可能であることが示された。 2. 球状蛋白質フェリチン内部への有機金属錯体の導入とその構造、反応制御 次に複数の金属錯体を導入し、内部空間での金属クラスター錯体合成や触媒反応を達成するため、より空間サイズの大きなフェリチンを用いた。鉄の貯蔵を機能とするフェリチンは24個のサブユニットから成る球状蛋白質で内部に8nmの空間を有する。本パートでは、フェリチンの内部空間に有機金属錯体を導入し、i) 金属クラスターの構造制御、ii) 内部空間での重合反応、iii) X線スナップショット解析による金属錯体結合過程の観察を行った。 i)フェリチン内部空間でのPd錯体多核クラスターの構造制御 [Pd(allyl)Cl]2錯体を取り込んだフェリチンの結晶構造解析により、Pd(allyl)錯体はフェリチン内部の2カ所にそれぞれCys残基を架橋配位子、His、Glu残基を配位子として利用し、2核クラスターを形成することがわかった。Pd錯体に配位しているHis残基をAlaに置換したミュータントを用いた複合体では、3核クラスターや異なる配位構造を持つPdクラスターが形成された。これらの複合体は、鈴木カップリング反応を触媒し、アミノ酸置換によって人工金属クラスターの配位構造と反応性を制御することに成功した。 ii) フェリチン内部空間でのRh錯体による高分子合成 フェリチン内部での高分子合成を目的とし、フェニルアセチレンの重合反応を触媒する[Rh(nbd)Cl]2錯体をフェリチン内部に固定した。フェリチン内部でのフェニルアセチレンの重合反応では、Rh(nbd)錯体を触媒とした場合と比較して狭い分子量分布をもつポリマーが得られた。また、モノマー置換基の電荷による選択性があり、カルボン酸やリン酸を置換基に持つフェニルアセチレンはアスパラギン酸、グルタミン酸によって形成されるフェリチン3回軸チャネルとの電荷の反発によってモノマーが内部に取り込まれにくいため反応が進行しなかったことがわかった。 iii) X線スナップショット解析によるフェリチン内部への金属錯体結合過程観察 アポフェリチンに対して50、100当量の[Rh(nbd)Cl]2と反応させた複合体の結晶構造解析を行うことでフェリチン内部表面へのRh錯体の結合過程の観察を行った。その結果、3回軸チャネルから取り込まれたRh錯体は内部表面のHis49、Cys48に結合した後、大きくゆらいでいる周辺のアミノ酸残基His173やGlu45が構造変化を起こし、Rh錯体に結合することで安定な複合体を形成していることがわかった。 本研究の結果は有機金属蛋白質の構築だけでなく、その複合体の構造制御や触媒反応への応用などに展開しており、今後、蛋白質テンプレートを使った金属クラスター形成や触媒反応メカニズムの解明と同時に、有機金属錯体の高い機能を付与した人工金属蛋白質の創成が期待できる。
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