研究概要 |
本研究では平成16年度縲恤ス成17年度にかけて,生体信号,特に筋電信号に着目し,(1)Laplacian電極配列法の筋電図計測への適用,(2)前処理とペーストが不要なLaplacian筋電図用小型無線電極の開発,(3)開発電極と走査型文字入力ソフトウェアとの結合,を実施し,筋収縮でパーソナルコンピュータへの文字入力を行える無拘束インタフェースを開発した.平成18年度は,開発したインタフェースを用いて文字入力実験を実施し,その評価を重点的におこなった.健常者8名を対象に評価実験の結果,(1)Laplacian電極配列の導入により,従来の電極配列よりも文字入力時に発生する筋電の総発火量が有意に減少し,2次障害へのリスクを軽減できること,(2)電極が小型でリード線が無く,かつ皮膚への前処理と電極ペーストが不要なため,身体の様々な部位(たとえば上肢,下肢,首,頬など)への装着が容易で簡便に文字入力が行えること,(3)前腕全体が持続的な緊張状態にあっても,特定の手指の動きにより文字入力が行える可能性があること,を確認した.これらの結果から,開発インタフェースを重度肢体不自由者(特に脳性マヒ罹患者)用のコンピュータインタフェースとしても利用できる可能性が見出された.また,新たに,容量性結合の原理を応用し,布地を介してLaplacian筋電図を計測可能な装置を開発した.有線ではあるが,筋収縮により綿製布を介した状態で文字入力が可能であることを確認した.本装置の原理を,前述のインタフェースに組み込むことにより,よりユーザビリティの高いコンピュータインタフェースを実現できると考えられる.また,新規製作装置は,薄い導電性布を電極に使用していることから,寝たきりの肢体不自由者に対して,背面(着衣とシーツの間)への設置が可能になるなど,適用範囲を広げる効果も期待できる.
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