研究課題
基盤研究(A)
神経伝達物質であるグルタミン酸は、シナプス形成や記憶学習、さらには神経細胞死などの多彩な機能に関与する。δ2受容体は、小脳平行線維がプルキンエ細胞と形成するシナプス後膜に特異的に発現しており、このシナプスにおける可塑性過程である長期抑圧現象(LTD)を制御する。しかし、δ2受容体のリガンドが不明であるために、δ2受容体を介する信号伝達経路の解明は遅れている。これまでの研究により、グルタミン酸受容体ファミリーにおいて進化的にも完全に保存されているリガンド結合コンセンサス部位に変異を加えても、δ2受容体の小脳における機能(協調運動・平行線維シナプス形成・シナプス可塑性)が保たれることを見出した(EMBO Rep,2005)。一方、δ2受容体には、他のグルタミン酸受容体においてチャネルを構成するアミノ酸残基が高度に保存されているが、チャネル機能を持っているかどうかは明らかでなかった。そこで、チャネルポア部分のアミノ酸残基を変異させることにより、チャネルのCa^<2+>イオン透過性やイオン透過性全般を消失した変異δ2受容体を発現するトランスジェニックマウスやウイルスベクターを作成した。驚くべき事に、これらの変異δ2受容体は正常δ2受容体と全く同じ機能を有することから、δ2受容体は、「イオンチャネル型グルタミン酸受容体」に属するものの、チャネルとして働かないことが明らかになった(J Physiol,2007)。一方、δ2受容体の細胞内ドメインの最C末端部分を欠損させるとその機能を失うことから、δ2受容体はC末端部分に結合するタンパク質を介してシグナル伝達を行う「代謝型活性」を持つことが示唆された(Eur J Neurosci,in press)。
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