配分額 *注記 |
40,950千円 (直接経費: 31,500千円、間接経費: 9,450千円)
2006年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
2005年度: 15,600千円 (直接経費: 12,000千円、間接経費: 3,600千円)
2004年度: 15,210千円 (直接経費: 11,700千円、間接経費: 3,510千円)
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研究概要 |
本研究課題では,沿岸域での鉄の動態及び毒性シアノバクテリア(L.majuscula)による鉄摂取経路を解明し,沿岸域における生物利用可能な鉄の生成を予測する数値モデルを確立することを目的とした。以下に,その研究成果を示す。 沿岸域での鉄の形態及びフミン鉄の錯平衡・凝集の実態を把握するための現地調査及び室内実験を行った。その結果,河川水中においてフミン第二鉄が存在することが示され,また,フミン鉄のうち90%程度は,沿岸域でカチオンの競合により解離することが分かった。クロマトグラフィー分析を併用することで,分子量及び疎水性物質含有量が低いフミン物質ほど凝集特性は低く,沿岸域への溶存鉄輸送に大きく貢献することが明らかとなった。 沿岸域におけるフミン鉄の錯平衡モデルを,分子量やイオン強度,pH等の物理化学的要因を考慮することが可能なデバイ-ヒュッケル理論に基づき構築した。凝集モデルは,従来のDLVO理論に新たに疎水性相互作用を組み込むことで構築された。上述の錯平衡及び凝集モデルと潮流拡散モデルを融合させることで,沿岸域におけるフミン鉄濃度の空間的及び時間的分布を評価することが可能となった。 スーパーオキシドを介してL.majusculaが鉄を摂取する経路を解明し,鉄摂取機構のモデル化を行った。スーパーオキシドによるフミン鉄の生物利用性(Fe(II)の生成速度)はその起源により異なるが,酸性官能基を多く含むフミン物質に結合した鉄ほど生物利用性が低いことが明らかとなった。また,Fe(II)生成に関わる各種反応速度を測定し,L.majusclaの鉄摂取に関する新たな反応スキーム(鉄摂取モデル)が構築された。以上の研究成果より,各モデルを融合させることにより,鉄の供給形態から沿岸域での生物摂取までの一連の過程を総合的に予測・評価することが可能となった。
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