研究課題/領域番号 |
16300113
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
神経解剖学・神経病理学
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
仙波 恵美子 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (00135691)
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研究分担者 |
森川 吉博 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教授 (60230108)
北村 俊雄 東京大学, 医科学研究所, 教授 (20282527)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2005
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研究課題ステータス |
完了 (2005年度)
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配分額 *注記 |
15,000千円 (直接経費: 15,000千円)
2005年度: 7,200千円 (直接経費: 7,200千円)
2004年度: 7,800千円 (直接経費: 7,800千円)
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キーワード | 中枢神経系 / 発生 / アストロサイト / サイトカイン / レセプター / 神経幹細胞 / 放射状グリア / 嗅神経被覆グリア / 受容体 / TROY / TNFRスーパーファミリー / SVZ / RMS / GFAP / gliogenesis |
研究概要 |
1.発生過程及び成体の中枢神経におけるTROYの発現と役割 マウスの中枢神経系におけるTROYの発現をNorthern blot法、in situ hybridization法、免疫染色法、免疫電子顕微鏡法等で検討した結果、TROYは発生過程の神経上皮細胞や放射状グリアに加え、生後から成体において神経/グリア新生の持続している部位である脳室下帯(subventricular zone, SVZ)の細胞にも発現していた。生後1週のSVZにおいて、TROYは神経幹細胞からグリア前駆細胞系列に発現すると考えられているMusashi-1との共存を認めた。成体のSVZにおいて、GFAP陽性細胞やEGFR陽性細胞の一部は神経幹細胞であると考えられており、TROY、GFAP、EGFRの3重免疫染色の結果、すべてのTROY陽性細胞はGFAP、EGFRのどちらかを発現していた。更に生後から成体において、特に大脳皮質や線条体、海馬を含む前脳において、GFAP及びS100陽性のアストロサイトに発現を認めた。一方胎生期から生後、成体にかけてPSA-NCAMやTuJ1陽性の神経前駆細胞やNeuN陽性の神経細胞にはTROYの発現は認められなかった。更に、神経系におけるTROYの役割を検討するため、PC12細胞に過剰発現させたところ、TROYのシグナルが神経細胞への分化を抑制することを見出した。これらの結果より、TROYは発生過程の神経/グリア新生の盛んな領域において、神経幹細胞もしくは神経細胞にcommitmentしていない前駆細胞に発現し、神経細胞への分化を抑制し、未分化性を維持している可能性が示唆される。また生後から成体にかけても神経幹細胞の存在している領域である、SVZの神経幹細胞もしくは神経細胞にcommitmentしていない前駆細胞に発現し、神経細胞への分化を抑制し、アストロサイトへの分化を促している可能性が考えられる。 2.嗅覚発生過程におけるTROYの発現 嗅覚系において、胎生後期から成体に至るまで、嗅球の嗅神経層の内層にTROYのmRNA及び蛋白の発現が認められた。TROYに対する抗体と嗅球の神経細胞やグリア細胞のマーカーとを用いた2重免疫染色の結果、TROY陽性の細胞は、嗅神経層の内層のNPY陽性の嗅神経被覆グリア(olfactrory ensheathing cells ; OECs)であった。一方嗅神経層の外層のp75陽性のOECsにはTROYの発現は認められなかった。また糸球体層が形成される生後以降は、嗅神経層の内層のNPY陽性のOECsに加え、嗅神経層の内層、糸球体層のGFAP陽性細胞にもTROYの発現が認められた。これらのGFAP陽性細胞が中枢由来のアストロサイトであるか、嗅上皮由来のOECsであるかは議論のあるところであるが、我々は糸球体層より内層のGFAP陽性細胞にはTROYの発現が認められていないこと、糸球体層の形成とともに発現してくることからOECsであると考えており、発生過程だけでなく、成体の嗅神経再生過程においてもOECsの増殖や分化にTROYが何らかの役割を担っていると考えている。
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