研究分担者 |
鈴木 隆雄 (財)東京都高齢者研究・福祉振興財団, 東京都老人総合研究所, 副所長 (30154545)
吉田 英世 (財)東京都高齢者研究・福祉振興財団, 東京都老人総合研究所, 研究副部長 (00242735)
大渕 修一 (財)東京都高齢者研究・福祉振興財団, 東京都老人総合研究所, 研究副部長 (50265740)
石垣 和子 千葉大学, 看護学部, 教授 (80073089)
上野 まり 神奈川県立福祉大学, 健康福祉部, 講師 (50323407)
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研究概要 |
○研究I:研究Iの目的は,都市部在住高齢尿失禁者の有症率とその特徴を明らかにすることである.対象者は70歳以上高齢女性957名である.尿失禁の有症率は43.5%(416/957)と高く,尿失禁者は健康度自己評価が低く,3種類以上の服薬の割合や転倒恐怖感を持っている者の割合が高かった.また,尿失禁者は心臓病の既往が高く,出産経験者の割合が高かった.さらに,尿失禁者は年齢が高く,通常歩行速度や最大歩行速度が遅く,開眼片足立ち時間が劣る特徴が観察された. ○研究II:研究IIの目的は,高齢尿失禁者の排尿機能の改善を目指す骨盤底筋運動と体力強化運動の効果を検証することである.研究Iの対象者の中で,尿漏れの頻度が月1回以上の290名に尿漏れの改善を目指す快適教室への参加を促したところ,147名が参加を希望し,143名は不参加であった.参加希望者147名を無作為割付けにより,年齢,尿漏れの頻度,歩行速度,内転筋力に差がないように2群に分け,運動群74名,対照群73名を配置した.介入群には週2回,1回当たり60分,3ヶ月間骨盤底筋運動と足・腹部の筋力強化を意図した総合的な運動指導を行った.3ヶ月間指導後の体力の変化は繰り返しのある分散分析より,尿失禁の改善はMann-Whitney法より検定した.その結果,内転筋力は介入群の事前20.92±6.20kgから事後25.01±7.11kg,対照群の事前21.44±4.77kgから事後23.57±5.36kgへと変化し,両群間の変化に有意差が見られ(F=6.364,p=0.013),介入群の変化が対照群の変化より有意に大きかった.また,最大歩行速度は介入群の事前1.78±0.38m/secから事後1.81±0.37m/sec,対照群の事前1.71±0.35m/secから事後1.65±0.36m/secへと変化し,両群間の変化に有意差が見られ(F=4.843,p=0.030),介入群の変化が対照群の変化より有意に大きかった.3ヶ月介入後における尿失禁完治率,運動群43.1%(31/72),対照群14.1%(10/71)として,両群間で有意差がみられ,運動群の完治率が対照群の完治率より有意に高かった(Z=3.817、p<0.001).これらの結果から,排尿機能の改善を目指す包括的な介入プログラムは,都市部在住高齢尿失禁者の筋力や歩行機能の向上および尿失禁の解消に効果的であったことを検証した.包括的介入プログラムの長期効果を検証するための追跡調査が今後の課題と言える.
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