研究概要 |
誤嚥防止には飲食物に適度な粘度を付与することが有効であることが経験的に知られているが、そのためには各種増粘多糖類の粘度特性を知り、それらの組み合わせによりどのような制御が可能になるかを知ることが必要である。本研究においては、各種多糖類および市販されているいくつかのトロミ剤についてレオロジー特性を解明した。また、造影剤とトロミ剤の混合系について、トロミ剤の添加量、粘度、降伏応力の変化が嚥下過程に及ぼす影響についてビデオ嚥下造影検査法により調べ、トロミ剤の添加量が少ない場合には、粘度および降伏応力が非常に小さく、咽頭反射が出現する前に咽頭を通過し、誤嚥しやすく、添加量が多すぎると降伏応力が大きくなりすぎ、咽頭蓋谷に貯留してしまう傾向があることが分かった。 嚥下物の粘度と嚥下量を変化させた時の口腔期から咽頭期への移行段階での送り込み運動の調飾様相を口蓋帆挙筋ならびに口蓋舌筋活動を指標にして検討した. (1)水嚥下時での両筋の活動は,個人至適嚥下量を中心にして,個人ごとに固有の範囲内で嚥下量に応じて筋活動は変化し,その変化の様相はsigmoid状であった.(2)日常の食物での状態をシミュレーションするために粘性を賦与した場合,嚥下量と粘度は負の相関関係を示した.(3)粘度を変化させた際,口蓋帆挙筋活動は粘度と嚥下量を説明変数とする重相関式によって説明できたが,口蓋舌筋活動では2変数以外の変数も考える必要があることが示唆された。 増粘剤を添加したニンジンのきざみ食の嗜好特性とキサンタンガムのレオロジー的性質におよぼす濃度(0.6,1.2,2.0%)と固有粘度(15.6,16.0,16.5,20.0dl/g)の影響について粘度、動的粘弾生および官能評価より検討した。キサンタンガムを添加したきざみ食の咀嚼回数・時間は、増粘剤を添加しないきざみ食に比べ減少した。高齢者パネルは、キサンタンガム(固有粘度15.6dl/g)を0.6%添加したきざみ食が、増粘剤を添加しないきざみ食と角切りに比べて、まとまりがよく、飲み込みやすいと評価した。総義歯装着高齢者では角切りが一番噛みやすく、ニンジンのきざみ食は小さすぎで噛みにくいと評価した。
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