研究分担者 |
前杢 英明 広島大学, 教育学研究科, 助教授 (50222287)
苅谷 愛彦 千葉大学, 大学院・自然科学研究科, 助手 (70323433)
伊藤 谷生 千葉大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (50111448)
宍倉 正展 (独)産業技術総合研究所, 活断層研究センター, 研究員 (00357188)
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研究概要 |
プレート収束境界の前弧域において見られる海岸地形の陸化過程から知られる動的な地殻の地震時隆起-地震間沈降ダイアグラムを明らかにするために,三陸海岸において変動地形学的および第四紀学的手法による実証的調査を行った。得られた成果・知見は以下の通りである。 1.第四紀中後期の海成段丘は9つ存在し,MIS21以降(約80万年前以降)の間氷期高海面期に対応して順次生成してきた。平均隆起速度は0.2-0.4mm/年である。 2.北部の八戸〜宮古付近の120kmの海岸線に沿って完新世離水海岸地形(海岸段丘)は少なくとも一つあり,その標高は3〜5mである。その離水年代は7000-5000年前である。 3.久慈川河口周辺の完新世低地における簡易掘削・機械ボーリングによるコア採取・堆積物の観察に基づくと,完新世海進頂期8000-7000年前の内湾堆積物は水深10-15mにあり,8mm/年の速度で沈降してきた様子がわかる。7000前以降河成環境へ急激な変化するイベントがあり,地震隆起が起こったらしい。以後河成層は再度沈降し,1mm/年以上の速度が推定される。2850年前以降は急激な環境変化を示すような堆積の不連続は見られない。 4.最近50年間の験潮場記録は,三陸海岸の連続的沈降を示す。沈降速度は2-11mm/年であり,日本海溝側に張り出した地点で大きな値をもつ傾向がある。 5.完新世において発生した地震隆起イベントは現実的モデルとして2回は想定され,その発生時期は7000-5000前と3000年前ごろと推定される。このシナリオに従うと,発生間隔は約3000年,1回の地震時隆起量は10mほどになる。 6.100kmを超える海岸線を垂直的に10m隆起させるには,収束歪みを開放するプレート間断層運動あるいはそこから分岐する大規模な逆断層運動が必要である。そのような運動が起こるときは,マグニチュード8クラスの巨大地震が発生する可能性が高い。今後,このような震源断層の検出・特定を行う必要がある。
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