研究概要 |
実験と理論両面からSi(100)表面に吸着した有機分子の構造と電子物性について研究を行い,以下の成果を得た. (1)低温のSi(100)c(4x2)表面に2メチルプロペンやプロピレンを吸着させ,その吸着状態を電子エネルギー損失分光(EELS),走査型トンネル顕微鏡(STM),第一原理計算を用いて詳細に調べた.非対称大マーに対してマルコフニコフ則が成り立つように吸着することが解明された. (2)低温のSi(100)表面にπ鎖体型で弱く吸着したエチレン分子に対し波長選択した可視・紫外光を照射した際の光脱離と光誘起化学吸着反応について実験的研究を行った.光誘起によりπ鎖体型エチレンは,光脱離と光解離が起こることが分かった. (3)Si(100)表面に吸着した1,4シクロヘキサジエンは基板温度により3つの異なる吸着状態をとることが観測された.室温での吸着状態(机型と考えられる)をとる単一吸着分子に対してトンネル分光を行い,電流-電圧特性の中に分子に由来すると考えられる特徴あるピークが観測された. (4)SiO_2/Si(111)および酸窒化膜/Si(111)の界面の電子状態を調べるために,軟X線吸収分光/軟X電発光分光をSPring8にて行った.異なる化学状態にある酸素および窒素のIs内殻準位から非占有状態への軟X線励起を選別することにより異なるサイトごとの価電子帯の電子状態を測定した.第一原理計算の結果とあわせて,界面の局所電子状態についての知見が初めて得られた. (5)第一原理計算の枠組みで,電場を印可した状態下で,Si(001)表面にdi-σ吸着した炭化水素分子の吸着状態を理論的に研究した.1V/Åくらいまでの電場条件下では吸着構造や震度数に対する顕著な変化は生じないものの,分子由来の軌道のエネルギー準位と基板由来のそれとの間に電場の大きさや分子の吸着高さ・軌道の性質を反映した〜1V程度のシフトが生じることが明らかになった。 (6)シリコン表面に,サブμmオーダーの金属ワイヤなど人工構造を電子ビーム誘起表面反応で作製する装置を開発した.
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