研究概要 |
本研究の実施により,(1)ビフェニル基を有するメソポーラス有機シリカの蛍光特性の把握と光捕集アンテナ機能の発見,(2)光機能性の新規メソポーラス有機シリカの合成,(3)電界発光素子の作製と発光機能の確認,についての成果を得た。各成果について以下説明する。(1)メソポーラスビフェニルシリカの蛍光量子収率は,φ=0.37-0.56(λ_<ex>=270nm,λ_<em>=370nm)となった。この値は,ビフェニル分子(φ=0.07)やビフェニルシランモノマ(φ=0.23)よりも高く,ビフェニル基の特異な配列に起因していると考える。また,細孔内にクマリン色素を導入すると,ビフェニル基が吸収した光エネルギーがほぼ100%の高い効率でクマリンに移動することが分かった。(2)今回新たにターフェニル,ナフタレン,アントラセン,ピレン,フルオレン,カルバゾールを含むメソポーラス有機シリカの合成に成功した。可視光領域での吸収(〜400nm)や発光(370〜520nm)が可能となり,発光素子や太陽光を利用したエネルギー変換素子への応用の可能性が高まった。(3)ビフェニル,アントラセン,カルバヅールを導入したメソポーラス物質を発光層とする電界発光素子を作製し,発光特性を調べた。その結果,電子及びホール注入材料と組合せることで,発光強度や寿命が不十分ながら,電界発光を確認することができた。発光波長は有機基の種類に応じ調整が可能であり,またドーパントへのエネルギー移動により幅広い波長の発光が可能である。以上の成果から,メソポーラス有機シリカが,優れた発光及びエネルギー移動特性を有し,発光素子だけでなく人工光合成系など光エネルギー変換材料としての高い可能性を有することが明らかとなった。
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