研究概要 |
弾性表面波モータの環流型ステータ電極の設計について電極設計と配置に関するシミュレータを構築し検討を進めた。反射器の周波数特性の設計値からのずれが,環流特性に大きな影響を及ぼしうることを見いだし,その精細な設計が必要とされることがわかった。環流する波の位相ずれによる環流電力の低下につても計算を行い,数10°の位相回転により環流電力が極端に低下してしまうことを明らかにした。また,モータの動作特性を考えると,駆動電極配置が非対称に配置されている現状のデザインから,対称な配置への変更が可能であるかどうかの検討を進めた。このために,まずは,駆動用IDTと反射電極の基本的な特性を再検討し,反射電極と駆動用IDTとの共振周波数のずれについて,どの程度の誤差が発生しているかを確かめ,その差を小さくすることにより,設計精度を上げるようにした。これらの検討を通し,これまで2つの駆動電極が片側の環流電極近くにおかれた非対称な構造であることに起因した,駆動方向による特性のばらつきを無くすとともに,環流特性に対しても改善を行うように設計をすることの検討を進め,設計上の問題点を明らかにした。 スライダ直下を伝搬するレイリー波の位相ずれを極力少なくするためには,位相変化が起こる原理と発生過程を詳細に把握するため,有限要素法による時間応答解析を試みた。シミュレーションの結果,スライダ突起による位相散乱が,スライダへの予圧により大きく変化する様子が再現された。さらに,その定量的な関係について検討を進めるとともに,動作解析からの検討も加えて,そのメカニズムについて考察を行った。その結果,波動の散乱に関しては,突起がステータ面と接触/離脱を繰り返すことにより,周期的な力を受けることで加振されていると考えられ,突起があることにより散乱波が放射することは,ほぼ避けられないのではないかとの見解に至った。また,突起があることで,位相の乱れも大きいことが考えられた。一つの解決策としては,突起を無くした平面のスライダにより動作を実現することが妥当ではないかとの考えに至った。その場合にはスクイーズ膜の影響を緩和するためにスリットを付け,突起を無くしたスライダの安定的な動作条件を検討していく必要があることを今後の課題とした。
|