研究概要 |
包括的なcDNA研究によって得られた膨大な機能未知遺伝子の機能を効率的に解明するために、巨大な蛋白質をコードするKIAA蛋白質の遺伝子欠損マウスを作製し表現型の解析することが有効であると考えられる。「巨大な蛋白質は蛋白質複合体の中心的働きをするため、KIAA蛋白質の欠損は機能蛋白質複合体の機能全体に影響を与え、遺伝子欠損マウスで明らかな表現型を示す」という仮説の実証のために、ヒトで脳特異的に発現する5種類の機能未知のKIAA遺伝子(KIAA1409,KIAA1440,KIAA1447,KIAA1768,KIAA1276)の遺伝子欠損マウスを作製した結果、3種類のKIAA遺伝子欠損マウスで明確な表現型が得られ、それらのKIAA遺伝子欠損マウスの表現型を詳細に解析することができた。特に、KIAA1440-/-の卵は、2.5日の桑実胚までは正常に発生が進み、コンパクションも正常に行われるが、完全な胚盤胞になることはできない。更にIn Vitro細胞培養系を用いてもKIAA1440-/-のE3.5日胚は初代培養細胞としても増殖することができないことが示された。このためKIAA1440-/-のE3.5日胚をTUNEL法で調べた結果、アポトーシスが引き起こされていることが明らかになった。リアルタイムPCR法でマウスKIAA1440mRNA量を定量したところ、胚盤胞では1細胞期胚の5.7倍に発現量が増加していることから、KIAA1440蛋白質の胚盤胞期の発生過程での積極的な関与が示唆された。また、包括的に多くのKIAA遺伝子欠損マウスを作製するために必要とされるターゲティングベクター構築の迅速化に取り組んだ結果、ラムダファージの組み換え酵素であるRedα,Redβ蛋白質に突然変異を導入させることにより、高い組み換え効率を示すRed組み換え系を開発することができた。このことにより、BACクローンを迅速にターゲティングベクターとして改変することが可能になり、追加的にKIAA0817とKIAA1793遺伝子欠損マウスを作製することができた。
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