研究概要 |
発芽型バキュロウイルス(BV)に発現した膜タンパク質は、GPCR(BLT1,CCR2,CCR5,edg1,AT1a, AT2,D1,D5),GPCR複合体(ドパミン受容体-3量体Gタンパク質-アデニレートシクラーゼ)、γセクレターゼ複合体(プレセニリン、ニカストリン、APH1,PEN2)、ペプチドトランスポーター(PepT1)である。BLT1-BVでは、リガンドのLTB4を蛍光標識することによりBVでの結合アッセイを開発し、ドパミン受容体複合体では、BV上でリガンド依存性のシグナルが計測され、再構成できることが示された。γセクレターゼはBV上で活性型プレセニリンが再構成され、上記4種の膜タンパク質がC99からβアミロイドの生成に必要十分であることが示された。これらのBVをウイルスエンベロープタンパク質gp64トランスジェニックマウスに免疫することにより、CCR2,CCR5,edg1,ニカストリン、PepT1に対する特異モノクローナル抗体が作製でき、また機能を阻害する抗体や癌細胞に対してADCC活性を有する機能性抗体が得られるととがわかった。得られたニカストリン抗体は、未変性のニカストリンのN端を認識し、γセクレターゼ複合体がコレステロールラフトに活性型としてコレステロール依存性に分布すること、ラフト移行にはゲラニルゲラニル化が重要であること、またニカストリンが構造的にγセクレターゼ複合体の端に位置していることなどが示された。膜貫通領域での加水分解の機構を説明するモデルを示唆するものである。またGi-CFPとRGS10-YFPをリンカーでつなぐことにより、A1F刺激によりFRETを起こすプローブの作製に成功した。これらの結果は、BV上での膜タンパク質の発現系が膜タンパク質複合体解析に有用であることを示すものであると考えられた。
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