研究課題
基盤研究(B)
平成16年度から倉富日記の一部翻刻を進めてきたが、1919年〜21年までの日記についてはすでに翻刻が終わっており、一部を下記Webサイトにて限定公開した。本報告書には、その一部(1920年の1月1日から7月9日まで)を印刷掲載した。翻刻した倉富日記は図書として2009年から公刊する予定であり、すでに国書刊行会との間で出版契約が成立している。倉富家の御遺族からも刊行について内諾を得た。印刷刊行が決まったので、Webサイトでの翻刻日記の限定公開は中途で停止した。研究成果としては、まず第一に、東京控訴院検事長時代の倉富日記を材料に、日比谷焼打事件裁判における検察当局と司法省の動向を明らかにしたことがあげられる。これは、日比谷焼打事件の研究において従来まったく不明とされてきた問題であり、一次資料を用いてはじめて解明したものである。また、倉富の伝記的研究としては、韓国政府顧問として渡韓するにいたった事情のうち、Push要因というべきものを、ほぼ完壁に明らかにすることができた。これについては、先行学説がすでに存在している(平沼・三谷説)が、それを一次資料を用いて裏づけるとともに、その経緯をさらに詳細に明らかにした点で意義がある。第二の成果は、田中義一内閣時代の朝鮮総督府官制改定問題を分析することで、天皇・内閣総理大臣・朝鮮総督三者の権力関係について厳密な考察をおこない。朝鮮総督は各省大臣と同格の存在として内閣の外部に位置づけられていたが、同時に内閣総理大臣のもつ機務奏宣権によって、その行政統制権のもとにおかれていたことを明らかにした。なお研究計画では、日記の翻刻とあわせて、1920年代の宮中問題の研究を主とする予定であったが、同時並行させていた倉富勇三郎と植民地朝鮮の研究(国際日本文化研究センター松田利彦准教授主宰の共同研究「日本の朝鮮・台湾支配と植民地官僚」での分担テーマ)に時間をとられ、宮中問題については具体的な成果を発表するまでにいたらなかった、しかし、すでに研究は進んでいるので、しかるべき時に追加発表する予定である。
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立命館文学 605
ページ: 147-175
The Journal of Cutural Sciences Ritssumeikan Bungaku 605
40016049791
MATUDA Toshihiko, YAMADA Atsushi, ed Study of Bureaucracy of Japanese Colonial Empire(Sibunkaku, Kyoto)
立命館文学 605号
日本歴史 692号
ページ: 114-115
日本歴史 652
http://www.bun.kyoto-u.ac.jp/~knagai/kuratomi/kuratomi.html