研究課題
基盤研究(B)
(1)18世紀から19世紀への転換期に、ドイツでは、大学における法学教育と裁判所における実務修習の分離、国家試験による成績コントロールという二段階の法曹養成課程が成立し、制度化された。それに対応して、法学のあり方が基本的に変化した。学問としての法学(具体的には歴史法学)成立である。まずRechtsencyklopaedieという種類の文献を手がかりに、法学の諸科目が他の学科(哲学、倫理学)から分離し、相互の有機的関連をもった体系として成立し、自立した法学の体系が形成される過程を考察した。つぎに、ベルリン大学の法学教育において、現行法であるプロイセン法とローマ法がどのような関係にあったかを、大学、裁判所、学生、文部省・司法省のアクターによる理念と実行の交錯のなかで、法学がどのような形態をとるに至ったかを明らかにした(学会報告)。(2)18世紀まで大学ではRelatinstechnikのような実務科目も教えられていたが、これが法学から排除された。しかし、それは実務修習の課程に定着し、現在にいたっている。それがドイツの大学教育に取り入れられ、20世紀後半には「練習」におけるGutachtenmethodeとして、広く実施されている。わが国の司法研修所および法科大学院における要件事実教育と比較してみることが重要であり、さらにこの点につきドイツ、オーストリア、スイスを調査したうえ報告書を作成し、かつオーバーハンマー教授に依頼した原稿を翻訳紹介した。(3)明治期以来日本法学がヨーロッパ・ドイツ法学をどのように受容したか、穂積陳重を中心に民法と比較法について、またドイツ近代法史という科目について考察し、外国に紹介した。(4)法科大学院における理論教育と実務教育にっき基礎法学の所見を述べ、基礎法学の重要性を強調した。また「法曹倫理」という科目の教科内容にっき具体的な提言をおこなった。
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