研究概要 |
地震教育,地震防災教育のあり方を数ヶ国での教育の現状調査を通して明らかにし,グローバルな視点による新しい地震教育カリキュラムの作成を目的とした研究を行った.その結果,以下のことが判明した. 日本の小・中学校教員に関する現状調査の結果より,小学校の教員は「理科」を背景に持っている教員が極少数であること,中学校の理科教員で「地学」を背景に持っている教員が少数派であること,特に地震を背景として持つ教員はほとんどいないことが判明した. 日本の教科書分析から,地震学習において教科書間で用いられている用語の差異が大きいなど,内容に差があることが判明した.日本,ニュージーランド,ネパール,エジプト,アルゼンチン,ブラジルの教科書分析および現地校調査も踏まえた国際比較から,日本の地震教育の内容は自然科学的側面に重点が置かれ,社会科学的な側面が,例えばニュージーランドなどに比べて非常に薄いことが判明した. 大学1年生への調査および新聞記事の分析から,地球人として生きるために必要な地震リテラシーが高等学校卒業段階までに学習できておらず,そのために地震リテラシーが高等学校卒業までには身に付いていないことが判明した.また,地震報道の新聞記事が読める力を地震リテラシーの基準とするならば,高等学校までの学習内容では,新聞に登場する地震に関係する用語の半分程度しか学習されないことも判明した. これらの結果を受け,新しい地震教育のためのカリキュラムを作成した.提案したカリキュラムの内容で授業実践研究を行った結果,授業実践研究を行った学年(小3,4,6年,高1,2,3年,大1年)の児童・生徒・学生であれば,提案したカリキュラムにて学習可能であることが明らかとなった.今後,提案したカリキュラムに基づく教材提案など,具体的な形で教授内容を示していくことが課題として残された.
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