研究課題/領域番号 |
16340024
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
数学一般(含確率論・統計数学)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
磯 祐介 京都大学, 情報学研究科, 教授 (70203065)
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研究分担者 |
西村 直志 京都大学, 情報学研究科, 教授 (90127118)
藤原 宏志 京都大学, 情報学研究科, 助手 (00362583)
大西 和榮 茨城大学, 理学部, 教授 (20078554)
今井 仁司 徳島大学, 工学部, 教授 (80203298)
山本 昌宏 東京大学, 数理科学研究科, 助教授 (50182647)
若野 功 京都大学, 情報学研究科, 講師 (00263509)
東森 信就 京都大学, 情報学研究科, 研究員 (10397573)
西田 孝明 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70026110)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2006
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研究課題ステータス |
完了 (2006年度)
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配分額 *注記 |
16,100千円 (直接経費: 16,100千円)
2006年度: 4,700千円 (直接経費: 4,700千円)
2005年度: 5,300千円 (直接経費: 5,300千円)
2004年度: 6,100千円 (直接経費: 6,100千円)
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キーワード | 応用数学 / 逆問題 / 非適切問題 / 数値解析 / 多倍長数値計算 / 高精度数値計算 / スペクトル法 / 数値計算 / 多倍長計算 / 偏微分方程式 / 任意精度計算 |
研究概要 |
本課題研究では、偏微分方程式で記述される逆問題の中で、物理あるいは工学等において意味を応用逆問題に焦点を絞り、非適切問題の数学解析と数値解析の研究を行なうものである。特に将来の実用上の要請を考慮し、大規模な非適切問題の数値解析を高精度に行なうことを一つの目標とし、理論・アルゴリズム開発の他に高速多倍長計算環境の整備も研究対象としていることが特徴とも言える。 逆問題の数値シミュレーションを含む科学技術数値計算では、一般には有限桁の浮動小数点演算によって実数の近似と演算が計算機上で行なわれており、そこではIEEE754の基準により定義される倍精度方式が今日では一般的に利用されておいる。これは、数値計算の一般エンドユーザの利用環境では、10進法で約15桁の精度で近似された実数表現が前提であることを意味する。このため計算機上では丸め誤差は不可避な問題で、実数を厳密(exact)に扱うことは不可能であり、さらに微分方程式等の関数方程式の数値計算では離散化に誤差も当然考慮すべきものである。安定な計算スキームを期待させる適切(well-posed)な問題とは異り、逆問題で代表される非適切(ill-posed)問題では誤差の混入は信頼できる致命的であるが、これまでの非適切問題の数値解析研究では離散化誤差やデータに混入する観測誤差ばかりに議論が制限された嫌いがあり、丸め誤差まで踏む込んだ議論が十分とは言えなかった。本研究は、離散化誤差や観測誤差に関する先行研究を前提に、計算機の丸め誤差の挙動まで考慮し、理論的な考察のみならず、この問題を解決する新たな多倍長計算環境も構築していることが他の研究との大きな相違点である。さらに、高速な多倍長数値計算環境をひとたび導入した場合、函数方程式の離散化の高精度化もこれまでとは違う視点が生まれ、多倍長数値計算環境上での新しい計算手法の開発と確立も図られている。 具体的な成果は、本課題研究の先行研究で設計・実装されている高速多倍長数値計算環境exflibの整備を行ない、特に分担者・藤原宏志氏の研究により、科学技術シミュレーションへの活用を目指して特殊函数の組み込み化を図り、さらにはスーパーコンピュータ上でも稼働する計算環境の開発も行ない、成果を挙げた。また、従来の離散化手法よりも遥かに高精度なスペクトル法系列の離散化手法を多くの問題に適用し、多倍長数値計算環境と組み合わせて数値実験を行ない、提案の有効性を確認した。また、実用面での応用逆問題を意識し、観測誤差も考慮した問題への正則化法の適用も視野に入れた研究を行ない、混入する誤差と正則化パラメータ・丸め誤差の関係についての知見も得ている。 非適切性は問題固有の性質であり、逆問題に限ってみても、問題毎にその非適切性の発現は異っているため、個別の逆問題についての数学解析の研究を本課題研究の基礎研究と位置づけ、解の一意性や条件安定性に帰還する研究を行なった。この研究分担者・山本昌宏氏が逆散乱問題について精密な成果を得ている。また、また応用逆問題を目指して数学解析・数値解析の理論を実用問題に適用するには、実用問題を視野にいれた計算力学的な基礎研究が不可欠であり、分担者毎のテーマに沿って応用逆問題の個別的研究を行なっている。さらに、高速多倍長数値計算環境の将来の応用の一つとして計算機支援証明の研究も取り上げ、精度保証数値計算の研究も課題研究の一環として行ない成果を得た。 なお、この分野でのアジアの研究者の共同研究を強化するため、中華民国(台湾)の研究者との研究交流を図るための日台共同セミナーを中華民国中央研究院数学研究所および台湾大学数学系と定期的に行ない、また、中国・韓国との研究者の交流も図り、将来の研究推進の基礎を築いた。
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