研究課題/領域番号 |
16340108
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
物性Ⅱ
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
新井 敏一 京都大学, 低温物質科学研究センター, 助手 (80333318)
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研究分担者 |
矢山 英樹 九州大学, 大学院理学研究院, 助教授 (60166840)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2006
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研究課題ステータス |
完了 (2006年度)
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配分額 *注記 |
15,800千円 (直接経費: 15,800千円)
2006年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2005年度: 5,800千円 (直接経費: 5,800千円)
2004年度: 7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
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キーワード | 希薄ボース気体 / 水素原子 / 2次元超流動 / 2次元電子 / 電子付着 / エッジマグネトプラズモン / 液体ヘリウム / 表面 / 原子状水素 / 超流動 / 液面電子 / 2次元希薄気体 / 2次元 / 超流動状態 / スピン偏極 / 電気双極子 |
研究概要 |
量子統計にしたがう系において、粒子が自由に運動できる空間の次元を下げると、ゆらぎの効果が大きくなって相転移や集団励起などの性質に強い影響がでる。2次元希薄ボース気体は、超低温においてBECとは異なる擬凝縮とよばれる状態になる。さらにKosterlitz-Thouless転移で超流動状態へと転移していくことが予想される。ボース粒子である水素原子は、液体ヘリウム表面に吸着することで液面垂直方向の運動自由度を失い、吸着面内でのみ原子が自由に動き回れる2次元ボース気体となる。 一方、液体ヘリウム表面上の電子は液面に束縛されて液面垂直方向の運動の自由度を失い、2次元クーロン気体となる。きわめてクリーンな液体ヘリウム表面の上に形成される2次元電子系は移動度が非常に大きく、もしも液面に散乱体があると電子の移動度にその影響が強く現れる。 本研究は、ヘリウム液面吸着2次元水素原子気体を冷却して擬凝縮・超流動状態への相転移を実験で観測することを目的として実験を行った。2次元水素原子気体の状態を観測するためのプローブとして、同じヘリウム液面上に共存させた2次元電子を用いた。水素原子あるいは量子凝縮相における素励起が電子の散乱相手となり、電子の移動度が2次元水素原子気体の状態によって変化することが期待される。結果は残念ながら液面電子の移動度で2次元水素原子気体の状態を観測することができなかった。電子と水素原子の散乱断面積が予想していたよりもはるかに小さく、水素原子気体の存在下においてもリプロン散乱の寄与が最も大きかったことが原因だろうと考えている。実験データから電子-水素原子の散乱断面積の上限を求めることができ、その値は10^<-11>mよりも小さいことがわかった。目標だった2次元水素原子気体の量子凝縮相の観測には至らなかったけれども、研究には大きな進展があった。ヘリウム液面上電子-水素原子2次元共存系内で、水素原子による電子付着反応、H+e^-→H^-がおこり、詳細な測定結果からその反応のメカニズムを明らかにした。強磁場中で電子の移動度を測定する手段として用いたエッジマグネトプラズモンとよばれる閉じ込められた2次元電子に特有のエッジ励起からの信号をパルス法で短時間に多くの測定ができる技術を開発した。さらに、エッジマグネトプラズモンの信号が単純なドルーデモデルでは説明できない奇妙なふるまいをすることを最近になって発見した。現在、この奇妙なふるまいの理由を明らかにするための研究が進行中である。
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