配分額 *注記 |
16,400千円 (直接経費: 16,400千円)
2006年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
2005年度: 3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
2004年度: 11,300千円 (直接経費: 11,300千円)
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研究概要 |
1)PMMAのガラス状態でのエイジングによる緩和ダイナミクスを誘電緩和スペクトロスコピー法,温度変調DSC法により調べた.一定温度下でのアニーリング過程において,膜厚の低下とともにエイジングのダイナミクスが速くなり,緩和強度は小さくなることが明らかとなった.また,スピングラス系でみられるようなメモリー・若返り効果が観測され,これらの効果が膜厚に依存して変化することが観測された.また,PMMAガラスを等温エイジングした後,昇温過程においてreversing heat flow, non-reversing heat flowを温度変調DSCにより測定した.この結果,ガラス転移での分子移動度の回復は2段階的に起ることが明らかとなった. 2)ポリスチレン薄膜の等温エイジング過程で,電気容量の実部はエイジング時間とともに増加するのに対して,虚部は減少することが明らかとなった.このような実部および虚部のエイジング時間依存性はそれぞれ膜厚と誘電感受率の変化に対応していると考えられ,この系では膜厚と誘電感受率の同時測定が可能であることを意味する.また,体積および誘電感受率はいずれもメモリー効果を示すが,若返り効果については誘電感受率では明確に観測されるが,体積に関してはほとんど観測されなかった.これより,高分子のガラス状態では体積のような巨視的な物理量はエイジングにより一方的に変化するだけであるが,ある周波数での誘電的応答に限れば明確な若返りを示すことが明らかとなった. 3)PMMAガラスのエイジングダイナミクスをtwin-T shift測定により調べ,エイジング温度の差ΔTの増加とともに,cumulative agingからnon-cumulative agingへのクロスオーバーが起っていることを実験的に明らかにした.このことは高分子ガラスにおいて,スピングラス系での温度カオスと同様の効果が存在する可能性を示唆している。
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