研究概要 |
本研究では以下のような項目について研究を進めた。(1)金属ナノ微粒子におけるプラズモンの時空間特性を近接場光学顕微鏡で探求する。(2)ナノ構造分子集合体における励起状態ダイナミクスの時空間特性を同様に探求すること,また金属ナノ微粒子のプラズモン励起とナノ分子集合体との相互作用を,近接場光学顕微鏡を用いた時間/空間分解分光によって明らかにする。(3)これらを実現するため,実験装置や方法論の開発,即ち,増幅を伴わない広帯域波長可変フェムト秒励起光源の開発,近接場における光熱変換の方法の開発の試みを行う。 上記のうち(3)については,一部は完成に近づいているものの十分な特性を得るには至っておらず,引き続き研究・開発の努力を続ける予定である。 (1)(2)に関する研究のうちで,特に金属微粒子のプラズモン共鳴に関しては,本研究によって顕著な成果を得ることができた。球状金ナノ微粒子,金及び銀ナノロッド(ナノワイヤ),金三角形ナノプレートに関する近接場光学顕微鏡による研究の結果,共鳴プラズモンモードの波動関数を可視化することに成功した。また金ナノロッドについては超高速測定を行い,単一成分単結晶であるにもかかわらず緩和がロッド状の位置に大きく依存することを見いだした。 金属微粒子の凝集体については,プラズモンによって誘起される局所的な電場増強が表面増強ラマン散乱に主要な寄与をもたらすと言う仮説が数年前より提唱されていた。これに対して,近接場イメージングによって初めて明確な根拠を与えることに成功した。 ナノ分子集合体については,所内外との共同研究を含め,ポルフィリン骨格を持つ分子の集合体や高分子のダイナミクスについての研究を進めた。ポルフィリンワイヤ(高分子)では,相当距離にわたって励起エネルギーが伝播するという,常識を覆す事実を強く示唆する実験結果が得られた。
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