研究概要 |
本研究では光照射により局所的な電場増強効果を示す金属探針を用い,その先端にレーザーを集光照射することにより局所的に対象試料を励起させ,そこからの発光を集光・分光分析し,さらには質量分析するという着想に基づいた表面微小領域元素分析法の開発を目的としている。ここでは電場増強を引き起こすような金探針の作製法の確立およびその蛍光スペクトルの増強およびラマン散乱スペクトルの増強効果を観察した。また,分析ニーズとして溶液中での固体表面のラマン散乱計測があり,数十nm領域の空間分解能をもつ液固界面計測法の開発を行った。 金は延性があり,電解研磨による安定な製造法が求められている。これは切断寸前の電位を切断するタイミングの問題であることをみつけ,それを自動化する装置を開発した。また交流電位のオフセット電位が探針形状に極めて重要なファクターであることを見出し,本法に最適な探針形状の製造法を確立した。これによる数万倍のラマン散乱強度の増強効果を得ることができた。液固界面での測定の最大の問題点であった探針の液中制御であるが,探針を接着するチューニングフォーク自身が液に触れない構造を持つことが重要と考えた。試料側が開放されたガラスチューブでチューニングフォークを液から分離することにより,探針および試料は液中に存在させながらの安定制御を実現することができた。これら両者の開発により溶液中でガラス基板に付着したマラカイトグリーン分子のラマン散乱スペクトルを数千倍の増強度で測定することに成功した。探針については安定性にすぐれたタングステン探針を用いて,真空蒸着による金コートが有効であることを見出し,それによる蛍光強度の増強を測定した。その結果,十数倍の増強が確認され,探針の有効性と回折限界を超えた空間分解能での蛍光スペクトル測定の実現を示すことができた。
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