研究概要 |
1.我々は、世界で初めて分子機械「六員環型光動力キラル分子モーター」を開発した。しかし、熱回転の段階が遅く、このため分子モーター回転の高速化が求められた。 2.本研究では高速回転する光学活性新規五員環型分子モーター(2S,2'S)-(M,M)-trans-(-)-4aを合成し、その回転をCDで追跡し、モーター回転の動力学を明らかにした。キラルケトン(S)-(+)-8はCSDP acid法で合成し、絶対配置はX線結晶解析で決定した。キラルケトン(S)-(+)-8をMcMurry反応に付して光学活性分子モーター(2S,2'S)-(M,M)-trans-(-)-4aを収率26%で得た。絶対配置とCDスペクトルの関係から、先にFeringaグループによって報告された絶対配置は誤りであることがわかった。 3.合成した分子モーター(2S,2'S)-(M,M)-trans-(-)-4aおよび、そのモーター回転異性体の光反応と熱異性化反応をCDスペクトルで追跡し、モーター回転の動力学を明らかにした。その結果、光学活性な不安定体モーター(2S,2'S)-(P,P)-trans-4dの熱異性化における活性化エネルギーEa__-は16.8kcal/molであり、六員環型分子モーターに比べて、約8kcal/molも低いことがわかった。このように、分子モーター回転の高速化に成功した。 4.次に、新規五員環型分子モーターの連続回転について、CDスペクトルによう追跡実験を行った。その結果、10回転後も、CD強度はほぼ保たれており、大きな変化は見られなかった。このように新規五員環型分子モーターは高速回転するとともに、耐久性もあり、優れた分子機械である。 5.その他、キラルC60フラーレン誘導体の単結晶化に初めて成功し、Spring8を用いたX線結晶解析により絶対配置の最終的な決定に成功した。
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