研究概要 |
広島大学放射光科学研究センターのBL-15を放射光源とした真空紫外円二色性(VUVCD)分散計を用い,変性タンパク質のVUVCDスペクトルを測定し,本装置による非天然状態タンパク質の構造解析への応用を検討した。また,密度汎関数法を用いて,アラニンのVUVCDスペクトルの理論的解析を行った。 Metmyoglobinの酸・熱・低温変性状態の構造を詳細に解明するために,Thermolysineにより2つのペプチドに断片化し,それぞれをHPLCで分離・回収を行った後,各変性条件下でのVUVCDスペクトル測定を行った。その結果,metmyoglobinの熱・低温変性状態は,foldingの中間体であるA・G・H helix構造を維維していることが示唆された。また,酸変性状態においてもα-helix構造の存在が示唆された。これらの結果により,VUVCD分光法が,非天然状態のタンパク質構造解析に対して有効であることが示された。(論文作成中) アラニンの構造を基にして,カルボキシル基やアミノ基の回転及びこれら発色団周辺の水分子の数と位置を考慮しながら,密度汎関数法(DFT)法で構造最適化を行い,時間依存密度汎関数(TDDFT)法でVUVCDスペクトルを計算した。その結果,水分子9個の時に260〜140nmの範囲で実測値とよく一致したスペクトルが得られた。スペクトルの帰属(n-π^*,π-π^*,n-σ^*遷移)をすると共に,水分子ネットワークを含んだ溶液中でのアラニンの立体構造を明らかにした(J. Phys. Chem. A 109,6928-6933 (2005))。さらにこの手法を用いて,他のアミノ酸とペプチドのVUVCDスペクトルの計算を行った(発表準備中)。
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