研究概要 |
本研究は、強く相互作用している高分子・低分子が作る複合体の力学的性質とその構造の相関と複合体形成のメカニズムを明らかすることを目的としている。2年間の研究によって、次のような点が解明された。1)時系列小角X線散乱(SAXS)スペクトルにより高分子電解質・界面活性剤複合体の動的構造と力学的性質との相関を明らかにし、静電相互作用の強さによって誘起される秩序・無秩序転移によって、それらが大きく転移的に変化することを見出した。(Macromolecules 37,3809-3814(2004)) 2)ポリアクリルアミド・フェノール複合体ゲルの弾性緩和を調べることにより複合体の力学的性質を明らかにした。(JPC-B,108,10838-10844(2004)) 3))ポリアルキルアクリルアミド・アルキルフェノール複合体の形成条件、ナノ構造を明らかにした。(JPC-B,109,1055-1062(2005)) 4)我々の理論(JCP,120,5789-5794(2004))を用いてイオン性高分子ゲルの弾性緩和を解析し、体積弾性率、煎断弾性率、ゲル鎖溶媒間摩擦係数を求め、鎖の広がりの統計力学的指標であるFlory指数が塩濃度100mM以下で0.8以上になることを明らかにした。(JCP,124,094903(2006)) 5)DNA・界面活性剤複合体のナノ構造が添加塩濃度によって変化することを明らかにした。(Biomacromolecules in press) この他に、6)動的散乱測定から牛の眼球ガラス体の弾性係数が数100Paであること(Macromolecules 37,7784-7790(2004))を明らかにし、7)Oleyldimethylamine OxideとAlkyldimethylamine Oxideの液晶相図がAmine Oxideの水素吸着によって、相図の特徴が1本鎖的であったものから2本鎖的なものに変化すること(Langmuir 21,5731-5737(2005))を明らかにした。また、8)コロイダルシリカに吸着したイオン性界面活性剤のクラフト転移が、2つの転移に分裂にすることから、巨大イオンによって作られる電場の拘束が界面活性剤凝集構造の熱的性質に与える効果を明らかにし、9)高分子電解質と界面活性剤を高速混合すると数10msecで基本的秩序構造が出現するが、平衡構造は更に数十時間以上かけて形成されることを明らかにした。8)と9)の成果については、論文にするべく準備中である。
|