研究概要 |
本研究では,次世代フォトニックネットワークにおいて,波長をアドレスとして自在なパス制御を実現するために不可欠な,ノンブロッキング波長選択スイッチの実現を目指した.このデバイスは,チューナブル波長フィルタの中心波長を変化させた時に他の波長チャネルを遮断(ブロック)せずに,新たな波長チャネルにドロップ波長(フィルタ中心波長)を切り替える新機能デバイスである.この新機能を実現するため,本研究では高次直列結合マイクロリング共振器の中心波長を個別に制御して,中心波長が全て一致したときにだけドロップポートにスペクトルピークが出現し(ON状態),中心波長をずらした状態ではスペクトルピークが消失して全波長チャネルがスルーポートに伝達される(OFF状態)原理を考案し,その基本動作の実証を目指した. 平成16年度には,広範囲な波長チューニングを実現するため,ポリマー材料をコアに用いた2次直列結合マイクロリング共振器フィルタの個々の共振器上にマイクロヒーターを集積化して,熱光学(TO)効果によって個別に中心波長を制御してノンブロッキング波長スイッチを実証したが,応答速度(〜2msec)と波長再現性(0.16nm)に問題があった.最終年度の平成17年度は,耐熱性に優れた誘電体材料(Ta_2O_5-SiO_2)を用いて同様の素子を製作し,クロストーク-20dB,消光比40dB,中心波長再現性0.01nm,応答速度15μsecと,いずれもポリマー材料よりも優れた特性を実証した。ただし,誘電体材料の熱光学係数はポリマーよりも1桁小さいため,FSRおよび波長選択範囲が狭くなる問題が残った.そこで,2種類の異なる半径の直列結合によるバーニャ効果を用いてFSRおよび波長選択範囲を約10倍の23nmに大幅に拡大して,また長波長側と短波長側の両方向への波長スイッチングも可能なることを実証した.
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