研究概要 |
金型用の焼入れ鋼,航空機用エンジンや各種タービンに用いられる耐熱合金,チタン合金などのいわゆる難削材に対して,高精度・高能率な切削加工の実現が求められている.一方,研究代表者らは楕円振動切削という従来にない全く新しい切削加工法を提案し,難削材の超精密切削加工を実現し,その実用化を図ってきた.しかしながら,従来は旋削用の固定工具に対して楕円振動を与えるのみで,回転工具に楕円振動を与えることは不可能であった,そこで本研究では,楕円振動切削加工法による難削材の精密加工を目的として,回転するエンドミル工具に円振動を負荷し得るマシニングセンター主軸の開発を行った.ここでは比較的切削負荷の大きい楕円振動切削加工を実現するために,機械的に円振動を発生することとし,工具振動用の動力としてビルトインモータ,工具回転用の動力としてACサーボモータの2つの動力源を利用した.工具回転軸は偏心スリーブの内側を通り,その偏心量を許容する男性カップリングを介してACサーボモータと結合した.ビルトインモータによって偏心スリーブに回転を与えると,内側にある工具回転軸に円振動を与えることができる.2つの駆動軸それぞれにクランプ機構を内蔵したことにより,開発した主軸を装着したマシニングセンターでは,楕円振動プレーナ加工,楕円振動ミリング加工,および通常のプレーナ加工とミリング加工を行うことが可能となった.実際に難削材に対して,楕円振動を付加した場合の加工結果と通常のプレーナ加工,ミリング加工での加工結果を比較すると,楕円振動を援用することで切削力が小さくなり,工具寿命も長く,仕上げ面が良好で,ドライ加工にも適していることが分かった,これらの成果をもとに,実用化を目指すためマシニングセンターに装着することが出来る円振動切削アタッチメントの開発を行い,上記とほぼ同程度の加工性能を有していることを確認した.
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