研究概要 |
本研究では,最近発見され注目を集めている平面クエット系,平面ポアズイユ系,自律壁面系における種々のサドル解(不安定平衡解,不安定周期解)を再計算し,それらの特性を比較した.その結果,クエット系,ポアズイユ系の駆動様式の相違にもかかわらず,壁面剪断流には普遍的なサドル解が存在することを示した.それらは2つのグループに大別され,その1つである活発サドル解は卓越した縦渦運動により特徴づけられ,壁乱流の統計性質や空間秩序をよく再現する.もう1つの静穏サドル解は卓越したストリークを有し,乱流状態に比べはるかに小さい壁面剪断率を示す.そこで,数値実験において,この乱流状態より小さい壁面剪断率を示す静穏サドル解(不安定周期解)を,カオス制御理論を用いて安定化し,乱流壁面摩擦抵抗の低減を実現した.また,静穏サドル解の線形安定性を調べたところ,それがただ1つの不安定固有値をもつことが判明した.さらに,亜臨界レイノルズ数において,その安定多様体が層流アトラクターと乱流アトラクターとの吸引領域境界を形成することを明らかにした.乱流状態が静穏サドル解,そして吸引領域境界に接近する際にわずかな制御入力を印加することにより,乱流状態を層流化できることを示した.一方,乱流をよく再現する活発サドル解(不安定周期解)の性質を調べることにより,この種の解が,壁乱流の普遍的統計法則であるPrandtlの壁法則を再現することが明らかとなった.さらに,高対称性を有する周期箱乱流中の活発サドル解(不安定周期解)を求め,この解が等方乱流の普遍的統計法則であるKolmogorovの相似則を満足することを示した.
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