研究概要 |
着火メカニズムの解析をするための基礎データを得るために,予混合層流火炎の詳細分光スペクトル計測を行った.その結果,OH*,CH*ラジカルの発光強度比より火炎基部(アンカーポイント)での当量比変化,OH*ラジカルの回転スペクトルのP枝とQ枝の強度比より温度変化を把握することができた.また,アンカーポイントでは,当量比は希薄になり,温度も低下していることがわかった. 局所的に光エネルギを集中させることにより,分子が原子になり,さらにイオン化されプラズマ状態になる.プラズマ中のラジカル類が着火源となり,可燃混合気であれば燃焼反応へと移行する.このプラズマ領域内を詳細分光スペクトル計測ならびにフレーミングカメラによりナノ秒オーダでの可視化を行った.また,着火過程の様子をシュリーレン撮影によって観察した.これにより,次のことがわかった.(1)レーザ照射直後に球状のプラズマが生成され,その後全体的に膨張していく,そして,プラズマの大きさはレーザ照射後約2000nsから急激に減少していく,(2)レーザ照射からから100nsまでは,制動放射が見られる.100-1000nsの期間では,イオン化が活発に行われ,1000ns以降では,炭素,水素,窒素,酸素の原子スペクトルが顕著に確認された.(3)プラズマ内自発光強度の空間分布を調べた結果,レーザ入射側のプラズマ先端部において強い発光が確認され,電離度の違いを示すものと思われる.(4)プラズマの膨張とレーザ入射エネルギは比例関係があることがわかった.(5)プラズマの生成直後,プラズマの周囲に衝撃波発生し,プラズマ消滅後,火炎核が膨張していく様子が確認できた. また,プラズマ内で観測された原子スペクトルの発光強度比であるH-C/O, H-C/Nが混合気当量比に依存性を持つことがわかった.この原子発光強度比と当量比の依存性は,混合気流量,入射レーザエネルギに関係なく,火炎内でも火炎がない場合でも確認でき,当量比計測の可能性を示した.
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