研究概要 |
アゾベンゼンの光異性化反応を利用し高分子ゲルの網目構造を直接的に変化させることで、高分子ゲルの物性を制御することができる。アゾベンゼンは400nm付近の光を照射することでtrans体からcis体へと変化し、可視光照射または熱的にもとのtrans体へと戻る。このtrans-cis光異性化に伴い、アゾベンゼンの長軸方向の距離は0.90nmから0.55nmへと変化する。ピロメリト酸二無水物pyrromellitic dianhydride(PMDA)とアゾベンゼンを含むジアミン4,4'-diaminoazobenzene(DAA)をそれぞれ5wt%,7wt%,9wt%,10wt%で重合させて得たポリアミド酸オリゴマーを三官能性アミンの架橋剤1,3,5-tris(4-aminopbenyl)benzene(TAPB)を用いて末端架橋し、光応答性ポリアミド酸ゲル(PMDA/DAAゲル)を合成した。このポリアミド酸ゲルは、400nm付近の光を照射することで収縮し、可視光または熱で元に戻った。また、7wt%で合成されたゲルにおいて光異性化に伴いゲルの網目サイズが0.65nmから0.43nmへ変化することが動的光散乱によって観測された。このゲルを直径2mmのロッド状に加工し、青色レーザーを照射すると、ロッドの表面付近のみが光を吸収し、網目が収縮するので、約5秒で光照射方向にロッドが90°折れ曲がった。この状態で緑色レーザーを照射すると、網目は膨潤し、ロッドは真直ぐになった。このポリアミド酸ゲルをチューブ状に重合し、チューブを回転させながら青色レーザーを照射すると、レーザー照射部にくびれができた。次に青色レーザーを走査しながら、その直後に緑色レーザーを照射すると、レーザーの走査に伴い、くびれが移動するぜんどう運動するアクチュエーターとなることを確認した。
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