研究概要 |
本研究においては,ヒューマノイドロボットのハンドを利用した移動機能について研究した.ハンドが対象物に接触したり,対象物を把握することで,ロボットが転倒する危険性を減少させることが出来る.この性質を利用したヒューマノイドロボットの移動機能を実現した.平成16年度は,理論解析として,ハンドによる把持とロボット全身の安定性の間の依存関係に着目し,ZMPの解析をした,手先が環境と接触しない場合,ZMPが足裏支持領域の凸包に含まれる限り,ロボットは転倒せずに歩行を継続することが可能であるが,この概念をハンドが環境を把握する場合に拡張した.ロボットをテーブルの上に置かれた質点としてモデル化し,このモデルに対してハンド部を追加することで,ハンドの把握力とZMPの関係を明確に示した.また,シミュレーションのための動力学計算ソフトとして,OpenHRPを用い,ヒューマノイドロボットが手摺を掴むことで大きな段差を上るシミュレーションや実験を行った。その結果,ハンドで環境を掴むことで,ロボットが安定性を増し,より容易に段差を上ることが可能であることが示された.さらに,ハンドの設計にも着手した.多様な形状の環境を把握可能にするために,多自由度ロボットハンドの第一回目の概念設計を行った.このハンドは,高トルクを発生可能であり,手をつく動作が実行可能であった.次に,平成17年度は,ヒューマノイドに装着するためのハンドの設計を継続して行った.まず,1本指ハンドを作成し,有効に動作することを検証した.このハンドは4関節を有しており,そのうち1関節が従動関節となっている.また実験的研究として,特に,ヒューマノイドロボットが大きく重い対象物を持った場合を想定し,対象物を全身で把握して持ち上げる研究を行った.手先に取り付けられた力センサの情報をもとに対象物を持った状態でのロボットの姿勢を調節する手法を提案した.その結果,体重が50kg程度のロボットが10kgもの対象物を落下させることなく持ち上げることに成功した.また,対象物を持った状態での歩行の実験も行った.さらに,手先に取り付けられた力センサ情報をもとに,ロボットの歩行パラメータを調整する方法を提案した.この手法では,予め計画された歩行動作をリアルタイムに変更するために解析解を用いる.そのため,保容の変更が素早くできる事が特徴である.これにより,ロボットの手をひいてナビゲーションするような動作が実現された.最後に,平成18年度は,ヒューマノイドに装着するためのハンドを作成した.このハンドは各指が4関節を有しており,全部で4本指を持っている.また,ほぼ人の手と同じサイズであり,人と同等なサイズのヒューマノイドロボットに搭載する事が可能である.また,このハンドは指先で10[N]程度の力を発生させることが可能である.このハンドを用いて,基礎的な動作実験を行った.また理論的研究として,ヒューマノイドロボットが動作を生成する場合に,人間に近いような自然な動作を実現することが望まれる.そこで,最適化理論を用いて,評価関数を最適化する動作を生成する手法を提案した.これにより,より自然な歩行動作やリーチング動作が得られた.得られた動作を用いて,より複雑な環境下での動作を生成した.
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