研究概要 |
ウインドファームを構成する1機当たり1MW級の大型風力発電設備に関しては,雷撃による風車ブレードの損傷が深刻な課題として国際的に認識されている。本研究では従来の避雷針・避雷塔や避雷シールド線などの受動的避雷技術とは異なり,大気圧プラズマによる電荷を利用して風車ブレード近傍の電界を制御する能動方式を提案し,実験的に検証した。以下成果を具体的に述べる。なお評価に際し波高値200〜300kVの雷インパルス電圧を使用した。 1.絶縁物表面電荷の雷撃経路に及ぼす影響:ワイヤコロナ放電によりイオンを発生させて絶縁物表面を帯電させた。表面電荷が雷インパルス電圧と逆極性である場合は絶縁体表面にまとわりつくように放電が進展するのに対し,同極性の場合は表面から離れて放電路が形成されることをはじめて見出した。この結果絶縁物表面の保護が可能になる。 2.絶縁物周辺空間電荷が雷撃経路に及ぼす影響:雷インパルス電圧と同極性の空間電荷が大気中に存在する場合は50%フラッシオーバー電圧が増加し,逆極性電荷が存在する場合は減少することを実験的に確認した。この際空間電荷量を確保するため,帯電した微小水滴を空間に噴霧して供給した。 3.水膜による絶縁体表面保護:絶縁物表面に水膜を形成すると雷インパルス電圧による放電は水膜上を進展し,絶縁物表面には触れないことがわかった。また使用する溶液の導電率が塩分を含む様な高導電率の場合には,水溶液中を放電電流が流れ,これ以下の場合は水面上に放電が形成されることを見出した。この現象を,溶液抵抗値とこれによって発生する水面電位との関係で説明した。 以上から,雷撃から風車ブレードを保護する手段として,絶縁体であるブレード表面の電荷制御が有効であること,また空間電荷による雷撃経路の制御も効果が認められること,さらにブレードへ着雷した場合でも水膜によって表面保護が可能であることを示した。
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