研究概要 |
近年のパワーデバイスの低損失・高速化に伴い,インバータを用いた交流電動機可変速駆動システムは電流・電圧・トルクの制御能力が向上し,騒音・振動も大幅に低減した。しかし、最新のIGBT(Insulated-Gate Bipolar Transistor)の電圧上昇率(dv/dt)は3,000V/us以上に達し,周辺のコンピュータや電子機器にノイズや誤動作を引き起こす恐れがある。本研究はパワーエレクトロニクス機器のEMI発生機構を理論的に解明し,実用的かつ効果的なEMI抑制技術を開発することを目的としている。本研究ではパワーエレクトロニクス機器の中で,EMI対策が最も必要とされている交流電動機可変速駆動システムについて,以下の点を明らかにした。 1.200V,3.7kW汎用インバータを使用した駆動システムを対象として,コモンモードに対する等価回路とノーマルモードに対する等価回路を導出し,各等価回路定数の周波数特性を実測し,高周波漏れ電流,モータ軸電圧,ベアリング電流などの実測値と等価回路から算出した理論値を比較・検討した。 2.モータ中性線を利用したパッシブEMIフィルタを設計・製作し,優れた抑制効果を実証した。さらに,等価回路から算出した理論値と実測値を比較検討し,理論の妥当性を確認した。 3.模擬電源回路網(LISN)を用いて伝導性EMIを測定し,抑制効果を評価した。 4.400V,15kW中性点クランプ(3レベル)電圧形PWMインバータを用いた交流電動機駆動システムに適したパッシブEMIフィルタを設計・製作し,その抑制効果を検証した。
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