研究概要 |
近年,超伝導エネルギー貯蔵装置(SMES)の実用化に向けてコンパクト化・高磁界化が求められており,高温超伝導体を用いた伝導冷却SMESの設計・運転技術の確立が要請されている.本研究では,SMES用伝導冷却コイルのクエンチ・熱暴走特性を解明することを目的とし,Bi2212/Ag超伝導コイルを用いて通電実験を行い,さらにコイル形状を模擬した熱伝導解析によってそのクエンチ・熱暴走特性に関する検討を行った. 供試Bi2212/Agコイル最外層に伝導冷却用の高純度Al板を取り付け,GM冷凍機(1.5W@4.2K)により伝導冷却した.供試コイルに一定の直流電流の連続通電および実器の負荷変動補償を想定した三角波通電を行い,熱暴走特性を実験的に取得した.続いて熱伝導解析によってこれらの実験結果を再現し,さらに各通電方法による熱暴走の境界レベルを評価した.供試コイルにおける熱暴走発生の限界電流は10K以下において飽和傾向にあることを明らかにした.この原因として,各材料の有する熱的パラメータの温度依存性によるものであることを示した. 以上の結果を踏まえて,伝導冷却超伝導コイルにおける熱暴走・クエンチの検出技術に関する考察を行った.その結果,超伝導コイルの温度T[K]および発熱の瞬時値P[W]を計測することよって熱暴走を検出するのが有効であることを指摘した.P-T空間に熱暴走の検出レベルを設けることができることを示し,これが種々の負荷変動パターンに依存しないことから,熱暴走を監視・検出できる共通の評価基準を見出した.さらに,冷凍機の有する冷却能力と熱暴走検出レベルとの比較から,両者の差分が過渡的な負荷変動に対して超伝導コイルが熱暴走に至るまでのマージンであることを示した.
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