研究概要 |
本研究の目的は,VUV-軟X線という伝送路未開の領域を開拓し,可視-近赤外領域で一般的に使用されているガラス光ファイバのように,柔軟かつ高効率な伝送路を実現することである.その手法として,VUV-軟X線の波長の全域をほぼ完壁に透過する唯一の材料,「真空」をコアとする中空光ファイバについての下の研究を行った. 1.真空紫外光用アルミニウム中空ファイバの低損失化 MOCVD装置を用いて,平滑な表面をもつガラスキャピラリチューブの内面にアルミニウム薄膜を形成した中空ファイバを製作する際に,成膜条件および前処理条件を詳細に検討し,薄膜の表面粗さに起因する散乱損失の小さい中空ファイバを実現した. 2.真空紫外リモート分光システムの開発 中空ファイバを用いたリモート分光システムを構築し,その基本特性の評価を行った.分光したVUV単色光を中空ファイバによりサンプルに照射し,反射光を中空ファイバで検出して,フォトマルへと伝送した.なお伝送路としてはアルミニウム中空ファイバを複数本束ねたものを使用した. 3.1次元フォトニックバンドギャップを利用した中空ファイバ型伝送路の検討 中空コア部分を多層薄膜で囲んだファイバについて,伝送モード解析を行い,最適な多層膜構造の設計を行った.次に,樹脂もしくはガラスチューブの外面に多層薄膜を形成した後に,溶剤もしくは弗酸によってチューブを溶解・除去するという手法を用いることについて検討した. 4.軟X線集光伝送路の研究 中空ファイバをバンドル化したものを用いて,拡散するX線を集光し平行化したのちにファイバにより伝送することについて実験を行った.伝送路としては,使用波長において高反射率を呈するニッケル膜を内装した中空ファイバを使用し,金属コーティングを施さない石英ガラスキャピラリにより構成した伝送路との特性の比較を行った.
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