研究概要 |
本研究の目的は,本研究グループの独創技術として成果を蓄積してきた「光波コヒーレンス関数の合成法」という反射光分布測定技術と,本研究代表者が以前アメリカハイテック企業で展開してきた「波長掃引平均法」という測定法を融合させることにより,反射光分布測定技術の反射率測定精度を向上させ,光ファイバ増幅器などの光ファイバモジュールの診断,多重径路干渉の計測と評価など,光ファイバ通信産業で難関となっている問題の解決方法を提供することにある. 本研究では,光ファイバ中のレーリー散乱光同士の干渉など,反射光分布測定精度,感度と測定速度の制限要因を総合的に検討し,数値シミュレーションと挙動解析用基本式の導出によって,反射率精度,感度と測定速度の境実的な限界を把握することができた.レーザ光源の光周波数に光波コヒーレンス関数の合成のための高速変調と,波長平均処理のための比較的に低速な線形連続変調を二重に施す,という新たな手法を発明し,波長掃引平均法を施した光波コヒーレンス関数の合成による反射光分布測定システムの高精度化・高速化を進めた.この新しい技術により,従来手法では数1000秒を要する高精度光ファイバ反射率分布計測を数10秒で完了することに成功した.基礎実験にて,約0.02dB精度の反射分布測定を50s程度で実現した.研究代表者の知る限り,このような性能を実証した手法は他にはない.また,新たに適応型の光キャリア検出手法も提案し,ダイナミックレンジを大幅に拡大させることができた.この高精度・高速反射光分布測定システムを用いて,光ファイバモジュール中の反射率分布の測定,光ファイバモジュール中の多重径路干渉の測定などの基礎実験を行い,実証に成功した.さらに,光産業で難関となっている光加入者網における多分岐光路の診断への応用も検討した.加えて,分布型光ファイバセンシング技術の進展にも直接的に寄与している. 本研究の研究成果として,英文学会誌論文12件(内印刷中2件)が掲載され,国際会議論文15件(内招待講演2件,採択済み2件),国内学会・研究会論文27件(内採択済み4件)も発表している.
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