研究概要 |
研究では,静止衛星による移動体衛星通信の基礎技術を開発するために,日本国内で使用できるアンテナシステムの開発を目指した.研究内容は大きく分けて以下の3点である. (1)送受信を共用する円偏波2周波共用三角形パッチアレーアンテナの開発 (2)衛星追尾を行うための給電回路および制御システムの開発 (3)実験車両と模擬衛星局を利用した衛星通信模擬実験 具体的には,円形配列した際の素子間隔を縮小させるために,素子形状が三角形の円偏波パッチアンテナを開発した.これにより,アンテナは小形化され,さらに低仰角方向のアンテナ利得が向上した.開発した素子アンテナは,円形配列しやすく,小形ながらも2点給電による安定した円偏波放射が得られる構造とした. 素子を配列する際には,送受信素子を交互に配列にすることで,2周波共用とアイソレーション特性の両方を実現した.特性をさらに向上させるために,誘電体基板の比誘電率,素子形状,および間隔の最適化も併せて行った. アンテナに付属させる回路として,移相器を必要としないON-OFFの小形給電制御回路を開発した.本回路は全てチップ素子で実現出来るため,ユニットの大幅な集積化と低コスト化が可能となった. また,光ファイバジャイロとPCを利用した自動追尾システムを開発し,自動車の方向に併せて指向性制御を行う機能を組み込んだ.アンテナシステムは電波無響室にて実験を行い,有効性を確認した. さらに開発したアンテナの実使用環境下における特性を把握するため,模擬衛星局を千葉大学内の建物屋上へ設置し,(1)のアンテナを実際に通信実験車両に搭載した場合の特性を調べた.模擬局の送信電力および周波数は,ETS-VIIIを利用した場合とほぼ同様の回線設計値を利用した. 以上,本研究にて開発したアンテナは,小形化,2周波共用化,電子追尾機能を実現し,数値計算と実測の両面から,アンテナ単体での特性,およびシステム全体での特性を確認した. 最後に,これらの結果をまとめ,電子情報通信学会アンテナ伝搬研究会,IEEE AP-S,映像情報メディア学会に報告し,電子情報通信学会論文誌,IEEE Transaction on APに論文が掲載された.
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