研究概要 |
当該研究機関内に,以下のような研究を実施し,成果を得た. (1)WC-Co系超硬合金チップからW及びCoを効率よく選択的に分離回収するための手法として、水熱酸化法による処理を検討した。処理溶媒に硝酸を用いることにより、チップからCoをイオンとして溶出させると共に、骨材粒子であるWCを酸化し、レモン色のWO_3沈殿として回収できることを明らかにした。しかしながら、WC粒径が小さく、Co含量の少ない超硬合金チップに関しては、耐酸化性が高いため、硝酸が十分な濃度存在したとしても完全に酸化物に転換することが出来なかった。この原因は、チップ表面にWO_3が緻密な膜を形成してしまうためである。水熱処理中にチップを取り出し、このチップ表面を覆う緻密な酸化膜を剥離させ、引き続き処理を行うことで、処理時間は格段に早くなった。すなわち、この結果は水熱処理と機械的な処理を組み合わせることにより、より高効率な資源回収を実現することを示している。また、この処理によりWCの粒径やCo含量によらず、Wを酸化物として、Coをイオンとして完全に分離した形で回収可能であることが明らかとなった。また,耐酸化性のさらなる向上のためのTa,Ti,V,Crなどの炭化物や被覆が施されている場合でも本手法が有効であることを明らかにした. (2)水熱メカノケミカル処理によるNd-Fe-B系希土類磁石からのNdの分離・回収実験を行った。試料には市販のNiめっきを施したNd_2Fe_<14>B磁石を用いて、本装置による通常の水熱処理及び水熱メカノケミカル処理の効果について比較検討を行い、それぞれの処理条件の最適化を図った。組成Nd_2Fe_<14>B(Fe:68wt%、Nd:28wt%、B:1wt%)のNiめっき被覆希土類磁石(5mmφ×3mm)をテフロン内張り耐圧容器中に種々の溶媒とともに封入し、処理温度100〜250℃で処理時間を変化させてNdの分離・回収実験を行う。溶媒にはHCl+(COOH)_2の混合溶液、H_2SO_4+NaClの混合溶液、H_2SO_4+エタノールの混合溶液の3種類について検討した。その結果、塩酸+シュウ酸の組み合わせにおいて最も高効率でNdを回収できることが明らかとなった。Ndを固体として回収した後に残る廃液に関しては、pH調整によりNi及びFeを水酸化物として除去した。最終的な廃液中に含まれるホウ素に関しては、当研究室で研究開発を進めている水酸化カルシウムを鉱化剤とした『水熱鉱化法』により、再利用可能な鉱物として回収できることを明らかにしている。 以上のような成果を元に,今後,実用化への検討が期待される.
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