研究概要 |
天然ガス貯留層貯蔵の評価に必要な貯留層特性評価に資するため,まず,貯留層の間隙構造と間隙圧変化による間隙構造の変化を実験的に調べ,間隙構造変化を考慮した間隙構造モデルの構築法について検討した。次に,その方法で構築した間隙構造モデルに対して格子ボルツマン法(LBM)による単相流れのシミュレーションを行って浸透率に及ぼす間隙構造の影響について検討した。また,簡単のため,状態方程式を必要としない油-水系の二相流れに対してLBMによる流動シミュレーションを実施し,界面張力や岩石表面の濡れ性にともなう二相流れ特有の現象を再現するとともに,間隙構造モデルに対して流動シミュレーションを実施することで,残留流体飽和率に及ぼす間隙構造の影響について検討した。その結果,実岩石に比べて小さい空隙が比較的多く,空隙が貫通する割合が小さくなるものの,2点相関法を用いることで3次元間隙構造モデルを作成することができることがわかった。また,拘束圧や間隙圧の変化による空隙率の変化量が空隙形状に依存することが明らかになった。したがって,空隙形状に基づいて評価される空隙率を2点相関法に与えることで間隙圧や拘束圧の影響を考慮した間隙構造モデルを構築することが可能になるものと考えられる。次に,LBMによる単相流シミュレーションでは浸透率の実験値よりもかなり高い浸透率が得られることがわかった。この原因として,計算時のメッシュサイズ,壁面境界条件の設定,モデル寸法と実験に使用した供試体寸法の違いが考えられる。しかし,空隙の連結性や空隙径分布といった空隙構造特性が,浸透率に影響することが明らかになった。さらに,LBMによる多相流シミュレーションから,濡れ性や界面張力の違いが流体の流動挙動に影響を及ぼし,残留流体飽和率は空隙形状に依存し複雑な空隙形状ほど残留流体飽和率の値は大きくなることが確認できた。
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