研究概要 |
本研究は、プラズマの慣性静電閉じ込め(IEC)方式を用いたD-^3He核融合による小型の14.7MeV陽子源の開発を目指すものである. 40年近くにわたるIEC研究においてもD-^3He反応については黎明期にあった.つまり,ウィスコンシン大学におけるD-^3He反応由来の高エネルギー陽子の観測に留まっており,その発生空間分布はもとより,その総発生率でさえも定量されていなかった.D-^3He核融合陽子源の高出力化,実用化に向けては,IECにおけるD-^3He核融合の物理の理解と,現行IECをベースとした新たな装置概念の創出が不可欠である. このため,本研究ではD-^3He反応の空間分布計測に成功し,今後の高性能化へ向けて重要な知見を得ることができた.また,小型IECF装置の簡便性,安価性を保持しながら飛躍的高出力化を図るため,マグネトロン型イオン生成部を付加した新たなIEC概念を提案した.得られた主な成果は以下の通り. 1.運転条件(印加電圧やD_2-^3Heガス混合比)に対する核融合反応率の依存性を調べ,最適な条件を実験的に示すと同時に,その物理的根拠を示すことができた. 2.陽子発生の空間分布を同定する計測・解析手法を確立した. 3.D-^3He核融合の空間分布と,体積積分した総反応率を定量することに成功した. 4.空間分布計測の結果,具体的には,(1)D-^3He核融合反応陽子はプラズマ中から約60%,電極表面から約40%発生していること,(2)プラズマ中から寄与分は装置中心部に集中していること,が判明した.これらの結果はいずれも,先行研究から指摘されていた否定的な予測に反する極めてencouragingな結果であった. 5.マグネトロン型イオン生成部を1台付加することでIEC装置の動作ガス圧力を約1/10に低減することができ,その結果として,規格化反応率を従来の10倍に増加させることができた.
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